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一斉更新!CLASS OF 2022 日本人学生ブログ2:Whartonの特徴

 Class of 2022のSMです。今回はMBA生活が8ヵ月経過した中で、自身が感じたWhartonの特徴を大きく2つに分けてまとめてみました。(MBA受験生の皆さんの場合は、どの学校に受験・入学するか、非常に悩むと思いますので、そういった観点でも少しでも参考になれば大変幸いです。)

1.自分がチャレンジしてみたいことに対する機会がとても豊富

 皆さんのMBA留学をする目的は何でしょうか?

 個々人で様々な理由があると思いますが、多くのMBA生が「自分の人生で本当にやりたいことを探して、実際に体験して、本当に自分がやりたいことなのか確認したい」という考えを、MBA留学の理由の一つとして持っているのではないかと思います。

 Whartonは、学校の規模が非常に大きいため、色々なことに挑戦する機会が、授業・クラブ・各種プログラム等の多様な形で用意されております。そのため、自分の本当にやりたいことを探求・経験・確認する上で、その機会が抜け漏れする可能性が低いことは、Whartonの強みの1つだと思います。また、自身がやりたいことに対して、たくさんの参加形式が用意されているので、その中から自身のニーズに最も合致したものを選択することができるのは、Whartonならではと考えます。今回は、私がこれまで体験した3つの機会とその選択肢の豊富さについて、ご紹介したいと思います。(3つ全てとも、この1~5月のSpring Semesterに経験中ですので、複数のことを自分がやりたいタイミングでかつ短期間で挑戦できることも、Whartonのフレキシリビティさを表しているかもしれません。)

(1)実際の企業へのコンサルティングプロジェクト

 Whartonでは色々な形で、実企業へのコンサルティングプロジェクトが用意されています。例えば、スタートアップ向けにかなり本格的なコンサルティングサービスを提供する

SNIDER CENTER VENTURE CONSULTING”というプログラムがあります。他にも、クラブや授業等で色々な機会が用意されているので、個々の生徒のニーズにあったコンサルティングプロジェクトを経験できることができます。

 私の場合は、“Collaborative Innovation Program(MGMT892)”という授業の形で、コンサルティングプロジェクトに参加しております。この授業では、7つのプロジェクト候補があり、私はその中からヘルスケア企業の新規事業創出案件を選びました。私は、大企業からの社費派遣で、帰国後は新規事業開発業務をキャリアパスとして考えているので、数あるコンサルプロジェクトの中でも、本プログラムが自身のニーズに合っていると考えました。

(2)ソーシャルインパクト

 上記では、新規事業開発業務に興味を抱いていることに触れましたが、私は他にも社会貢献性が高い業務をやった時に自分がどう感じるのかということも、MBA留学を通して確認したいと思っております。

 Whartonではソーシャルインパクト系の授業やプログラム等がたくさんあり、また、クラブ活動も盛んに行われております。ソーシャルインパクト系のクラブだけでも、Social Impact Club、Global Impact Consultants、One for the World、Impact Investing Partners等多数あり、個々人のニーズに合わせたクラブに所属することができます。

 私は、「ソーシャルインパクト×実企業へのコンサルティングプロジェクト」という軸で、Global Impact Consultantsクラブに所属しております。そこでは現在、ケニアの衛生環境向上に従事している企業のプロジェクトをお手伝いしております。ソーシャルインパクトの経験に加え、ケニアの現地従業員の方と一緒にプロジェクトを進めるグローバルな体験ができております。

(3)起業/スタートアップ

 Whartonはファイナンススクールと思われがちですが、クラスメイトは驚くほどに起業/スタートアップへの関心が高いです。(感覚的ですが、少なくとも100人超が起業を真剣に検討しており、在学中にビジネスを始める学生もたくさんいます。)そのため、Entrepreneurship系のプログラムもかなり充実しております。“Semester in San Francisco”等はその代表的な例ではないかと思います。

 私の場合は、具体的な起業のアイディアを持っていたわけではないので、「まずはスタートアップで働くとはどんなものか、自分はそういった環境が好きなのだろうか」ということを確認したいと思っていました。そこで、Venture Initiation Program – Fellowsという、Whartonの現生徒が起業したスタートアップを手伝うプログラムに参加しました。また、Wharton内でのコミュニティを増やしたいと思ったのもこのプログラムを選択した理由です。本プログラム内では、多数の起業家が事業を手伝ってくれる人を募集しているので自分の好きなスタートアップに参画することができます。スタートアップのステージは、本当に事業を立ち上げたばかりでアイディアを模索するところから、もうすぐ新商品をローンチするところまで、本当に様々です。

 私は、数ある募集要項の中から、Whartonの2年生が昨年起業した「コンシューマー系×初の商品ローンチ間近」のスタートアップに参加することに決めました。来月には販売開始する予定なので、初月の売上がどれくらいになるのか今からワクワクしております。また、Whartonのクラスメイトにも販売する予定なので、どんなフィードバックが返ってくるかも、楽しみです。

2.世界トップクラスの頭脳+フレンドリーなクラスメイト

(1)自分の悩みに具体的なアドバイスをくれるCollaborativeなクラスメイト

 アメリカのMBAスクールは、どこかCompetitiveなイメージがあるのではないかと思います。私も入学前はそう思っていた1人でしたが、これは全く間違っていました。困っているクラスメイトがいたら、みんなびっくりするくらい積極的に救いの手を差し伸べてくれようとします。また、Whartonの切れ者な同級生がくれる具体的なアドバイスは、自身の行動・価値観に変化を与えてくれます。(どのような環境で学ぶかは非常に大事だと思うので、世界トップクラスのクラスメイトと同じ時間を過ごせることは、Whartonに入学する大きなメリットだと思います。)

 私は、現在Peer Coachingという、自身の悩みを話し、コーチングのプロと同級生からフィードバックをもらうというプログラムに参加しています。この類のプログラムは、ボヤっとしたディスカッションに終わるのではないかと危惧していましたが、クラスメイトは他者の悩みに真剣に耳を傾け、自分だったらこうするという具体的なアドバイスをくれるため、非常に役に立っております。

 私の場合は、「英語でのディスカッションに中々ついていけないし、迷惑をかけたくないので、つい質問や発言するのも躊躇してしまう」という話をしました。ある同級生からは、「グループで事前にルールを決め、例えば15分毎に誰かにディスカッションのサマリーをしてもらってはどうか」と具体的なアドバイスをもらいました。この発想は、自分では気づいていない視点だったので、早速直後のディスカッションの授業でチームメンバーにお願いしてみました。また、他の同級生からは、「英語が上手くなくても一生懸命コミュニケーションを取る姿は、迷惑だとかネガティブなものではない。二言語話せるのは凄いことだし、そういう姿を見たら尊敬する。全く躊躇する必要はない。みんなあなたの意見を聞きたいと思っている。」と言ってもらい、勇気づけられました。自分の弱さを見せられる環境があり、それに対して世界トップクラスの同級生から思いやりのある具体的な意見をもらえるのは、非常に素晴らしい環境であると感じています。

 こういったプログラム以外でも、日常的に友人に悩みを相談すると、必ず何か解決策が返ってきます。ある時、Writingに自信がないという話をしたら、ある友人は、私の原文を添削してくれた上で、直した方が良いところを3点サマリーにしてくれた別紙をくれました。他の場面でも、英語が分からないと言えば、そういう時はいつでも議論を止めて質問してくれと、温かく言ってくれます。

(2)友人との関係を大事にするフレンドリーなクラスメイト

 Whartonは、アメリカのトップスクールの中でも、特にクラスメイトとのネットワークを大事にする文化があります。このコロナの環境下でも、気を付けながら多くの学生が積極的にソーシャル活動を行っております。

 例えば、生徒が自主的に立ち上げたCoffee Chatというシステムがあります。これは、毎週2回ランダムにペアを作ってコーヒーを飲みにいこうというもので、新たな友人を作るのに非常に役に立っています。また、まだ全然仲良くなっていないのに、旅行がしたいと言えば、すぐ旅行に誘ってくれます。旅行先でも、アメリカ国内旅行に慣れていない私に対して、みんな親切に色々と教えてくれます。クラスメイトは、本当に友人関係を大事にしているということを日々感じます。Whartonの卒業後のアラムナイネットワークが強固だと言われるのも、この文化が根付いているからかもしれません。

 今回は、挑戦の機会が豊富、世界トップクラスかつフレンドリーな同級生という観点でまとめてみましたが、まだまだWhartonの色々な特徴があると思いますので、駄文で恐縮ですが、今後もまた気付いたことをこちらに記載していきたいと思います。(もし、疑問点や悩み相談がございましたら、本サイトよりお気軽にお問い合わせください。Collaborativeなクラスメイトを見習い、何かお役に立てれば幸いだと思っております!)

一斉更新!Class of 2022 日本人学生ブログ1:MBAで通用する英語力

自己紹介

Class of 2022の小澤です。TwitterやPodcast経由で知って下さっている方もいらっしゃるかもしれませんが、Japan Clubのwebsite上での露出は初めてなので、簡単に自己紹介させて頂きますと、男性/私費/商社→スタートアップで、現在Wharton MBAと併せ、同じくUniversity of PennsylvaniaのLauder Instituteで国際関係学とのDual Degreeプログラムに在学しています。

私の英語学習履歴
仰々しいタイトルになってしまいましたが、私の英語学習との出会いは、17歳の時に初めて海外旅行に行き、かつ大学一年時にはTOEIC315点という非常に恥ずかしい点数を叩き出したところからのスタートでした。幸い(?)、中高一貫校で、大学にも内部進学ができたので、勉強には全く興味がなく、悠々自適な大学生活を送っていました。大学一年時に部活を退部し、急きょ留学に行くことになり、私の果てしない英語学習の旅が始まったのですが、先日Podcastをリリースした際に、ある英会話学校の方から「英語力をどうやって伸ばしたか聞かせてほしい」とコンタクトを頂きました。私の英語力も発展途上であることは間違いありませんが、MBAに入学してから、英語力が原因でクラスについていけなかったり、同級生との会話を理解できなかったことは、他の純ドメの同級生に比べると少ないのではないかと思っています。アメリカ人にもコンペティティブと言われる業界の会社にも、「日本人であること」が全く価値にならない中、インターンシップのオファーを頂き、現時点でネイティブのマッチョ社会で生きていくことにも、あまり抵抗はありません(参考までに、先月リリースしたPodcastを付けておきます)。

https://t.co/Uhs2EDugMI?amp=1

一方で、大学一年生で留学した時には、相当苦労しました。日本人がいない環境に追い込もうと思い、アメリカの田舎に留学しましたが、アメリカ人はおろか、留学生の英語も全く理解できず、最初の2か月程度は非常に辛い経験もしました。私の英語力の推移については、このTwitterに掲載しましたが、一年の留学と、一年半英語環境に浸っていた訳ではない期間の後、TOEICは990点に到達し、英語で話す・書くことについても苦手意識は大きく低減しました。

https://twitter.com/ZachinAfrica/status/1244164129474015235?s=20

特段、変わった勉強方法をしていた訳ではありませんが、遺伝の影響もあったのか(言語は遺伝子が約50%で、残りの50%が努力でカバーできる部分らしいです)1年の留学を経て、現在と遜色ないレベルまで伸ばすことができました。前置きが長くなりましたが、今後MBA留学を目指す、もしくは現地で通用する英語力を身に付けたい方に、プロフェッショナルに要求される最低限の英語力についてお話できればと思います。

定義

ここでいう「現地で通用する」は、「ネイティブばかりの環境で、与えられた情報を聞き、読み、処理した上で、自分の意見を発信するレベルが、自分の職業人としての能力を制限しないこと」とします。

なぜ英語力が必要か(言語文化仕事)

個人的な経験を振り返ってみると、言語→国・文化への理解→プロフェッショナルとしての素地という順番で、成長カーブが訪れた気がします。個人差はあるでしょうし、人生のどの段階でどこに行くか(仕事で赴任するのか、学校に通うのか)によって差異はあるでしょうが、周囲のノンネイティブに聞いていてみると、ほとんどの人が同じような成長カーブを辿っているように感じました。せっかくMBAに2千万以上の投資をする訳ですから、事前にできるだけ言語と文化への理解は進めておいた上で、スキルやネットワークの研鑽に励んだ方が、投資対効果が高いことは自明の理だと思います。勿論、これらをすっ飛ばして仕事を得る人も存在するでしょうが、個人的には、「英語がさー、、」と言い訳をする人で、海外で就職し、活躍されている人を、私は存じ上げません。

あなたはどのレベルですか

突然ですが、あなたの英語力はどの程度か、把握されていますでしょうか。多少英語を勉強して、海外に慣れてきた日本人にありがちなのが、自分の英語力を過信してしまい、中学生レベルの内容を、ダラダラと外国人アクセントで、授業中に話してしまうことです。勿論、ParticipationがGradeの一部として評価される以上、内容が無いものを堂々と語れる度胸も必要になりますし、日本人以外の外国人でも同じような行動をする人は少なくありません。ただし、現地就職でコンペティティブなPEやVCを目指す場合、ネイティブの中でも、エリートが集まる会社に幾多ものDisadvantage(ビザやローカルカルチャーの理解等)を抱えて就職活動する以上、面接でこれをしてしまうと、果てしなく可能性はゼロに近くなります。言語だけでなく、世の中の自分に対する評価を正しく認識し、愚直に研鑽を積むことが、何よりも大切な一手になります。

「あなたは本当に英語を学習してきたのか」

日本の義務教育課程で英語を学んだ人は、Reading > Writing > Listening > Speakingの習熟度合いになると言われています。ほぼ日本国内で英語とフランス語を習得され、現在英語講師を務められていて、私が一方的に尊敬申し上げている森沢洋介氏によると、日本の英語教育は「音読、瞬間英作文が完全に欠落している」ことによって、「読める、書けるが、聞けないし、話せない」英語話者を生む原因になっているようです(表題の、半ば煽っているような言葉も彼の言葉です笑)。図のように、本来の言語機能である、話す、聞く、書く、読むをバランスよく習得することが、使える言語を学ぶ方法になります。辛いスコアメイクと面接を乗り越えたMBA受験生に何を言うか!と思われる方もいるかもしれませんが、現地でプロフェッショナルとして活躍する場合、想定Q/Aも手元になければ、初めて会う部下や上司の質問の傾向なんて知り得るはずもなく、実力だけで面接を乗り越える基礎力を既に持った人たちが、MBA中に、スキルやネットワークを身に付けた後、戦う場所がオフィスだと私も教えられました。

 (画像「英語上達完全マップ」より)

英語運用能力を伸ばす

では、実際MBA入学前や受験前にどのような準備をすべきでしょうか。私も発展途上ながら、僭越にも一意見を述べさせて頂くと、圧倒的に純ドメ+日本の義務教育のみで英語を学んだ日本人に足りないと思うのは、1. 発音 2. 瞬間英作文力 3. 表現力の順だと考えています。

  1. 発音
    まず、英語にはいくつ母音があるかご存知でしょうか?日本語には5つしかありませんが、英語には、26つもの母音があります。例えば、Hat/Hut/Hotは、日本語で言うと最初の2つは「ア」で、3つ目は「オ」ですが、どの程度口を開け、口の前・後・上・下どこで音を出すか認識できていますでしょうか。発音とは、因数分解していくと、「発音記号×音の繋がり×抑揚」で成るので、これらの「母音の発音ができていないのに、単語や文章の発音が正しくできるはずがない」ということになります。まずは、この本等を参考に、全ての音を理解してみてください。
    https://www.amazon.co.jp/%E8%8B%B1%E8%AA%9E%E8%80%B3-%E6%94%B9%E8%A8%82%E3%83%BB%E6%96%B0CD%E7%89%88-%E7%99%BA%E9%9F%B3%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B-%E6%9D%BE%E6%BE%A4%E5%96%9C%E5%A5%BD/dp/4048688634

  2. 瞬間英作文力
    英語でとっさに質問された時に、日本語を英語に訳しながら話している人は、「英語回路」ができていない、と森沢氏は言います。ヨーロッパ系の言語の場合は、英語と日本語の文法や主語・述語の順列が似ている、もしくは同じものも存在するので、訳しながらでも自然に話せる人はいますが、日本語の場合は、これができていないと、「英語力があるのに話せない」という状態に陥る場合があり、英語で考え、英語で理解する為に、瞬間英作文と音読を通じて、英語回路を作っていくことが大切になります。

(英語と日本語の文法)

(英語とフィンランド語の文法)

  • 表現力
    WritingとSpeakingに共通する点ですが、その場や設問にあった表現を学ぶ機会が非常に少なく、結果としてあまりにもフォーマルであったり、幼稚な表現になってしまっている場合があります。(これは終わりの無い学びだと思いますが)日本でも同じように、場の温度感や雰囲気を察知し、適切な笑いや返しができることは、インフォーマルな場だけでなく、職場でも非常に大切なスキルだと思います。ヨーロッパ出身の一部の方は、アメリカのコメディやアニメを観て育つ場合もあり、小さい頃から多読、多聴を通じて表現を勉強していますが、日本人の場合は、自ら意識して取りにいかないと、大量にシチュエーションに合った表現に触れることは難しい環境にあることは間違いないと思います。


長くなりましたが、MBA中/後に海外で通用するプロフェッショナルに、必要最低限の英語運用能力についてでした。コメントお待ちしております。

MBAの効用とは?プログラムの3/4を終えた凡庸な一個人の感想

こんにちは。Class of 2021の者です。2年生の秋学期が先週終わり、MBA生活も残すところ4分の1となりました。今の時点で「MBA留学をして何が一番良かったか?」と聞かれたら、私は「人生について深く考える時間をしっかりと持てたこと」と答えています。

高額な学費を掛けてそんなことか、と思われる方が大勢いらっしゃるでしょうし、私自身今までこの部分について明確に言語化していなかったので、なぜこのように考えるに至ったのか書き起こしてみようと思います。

MBA出願においても人生について考えるが、文脈が限定的である

“Why MBA?” ”Why this school?” “Tell me about your accomplishments.” “What is your long-term goal?”

こういった質問はMBA出願プロセスで必ず回答を準備しておかないといけない質問でしょう。HBSやStanfordの質問は少し趣が異なりますが、回答に際しては上記の内容に触れる場合が多いと思います。

“Why MBA?” “Tell me about your accomplishment” といった質問への回答準備として、多くの方は今までの人生を棚卸して、アプリケーションに「使えそうな」ネタを探す作業を行うと思います。私自身、そのようなステップを踏みました。今まで深く考えたことのない過去の経験がMBAのアプリケーションに「使える」ネタになるということ、そしてそのストーリーに今まで気付かなかった自分自身の強みを見出すことができたこと。この2つの観点で、非常に意味のあるものだったと思います。

しかし、いざ”Why this school?” “What is your long-term goal?” といった質問になると、どうしても出願校のプログラムや特色に「合わせにいく」感覚がありませんか?少なくとも私はそうでした。各学校のWebsite閲覧、Info Sessionへの参加、在校生や卒業生との会話といった地道な情報収集プロセスを通して各学校の特色を理解し、フィットを確認。100%フィットがあると納得していないとしても有名校であれば出願しないのは勿体ないのでエッセイの内容をうまく合わせにいって出願。私は、このようにしていました。自分のアスピレーションを深堀していくというよりは、「米国MBAトップ校が金融バックグラウンドの日本人に何を求めているのか」を考えてエッセイを書いた要素が大きいです。

短期的な目標である合格を勝ち取るためには、合理的な方法だったと考えています。一方で、確たる将来の展望を描けていない歯痒さのようなものは感じていました。

Vulnerabilityを見せること、受け入れることが学校レベルで推奨されている

無事に合格を勝ち取り2019年8月にWharton Schoolに入学したのですが、入学直後のPre-Termの経験で”Vulnerability”という言葉が何度も何度も登場したことが意外且つ印象的でした。Vulnerabilityは日本語にすれば「弱み」と言えます。リーダーシップ教育で有名なWhartonで「弱みを見せること」「他人の弱みを受け入れること」が推奨されていたことは、新鮮な驚きでした。

ビジネススクールに入学した直後というのは同級生と知り合う機会に恵まれています。多くの学生がネットワーキングに集中する時期であり、知らない人とも積極的に話そうとする雰囲気がキャンパス中に溢れます。

一方で、バックグラウンドの違う人々が集う場で共通の話題と言えば「入学前はどこで何の仕事をしていたのか?」「受験プロセスはどうだったか?」「卒業後どういう業界で働きたいか?」といった内容に凝縮されます。雑談もするのですが、留学生であれば出身地を言ったところで「日本行ってみたいよ!」「一度行ったけど素晴らしい国だったな。ご飯は美味しいし人は優しいし電車は正確だし。旅行では東京と京都と奈良を1週間で巡ったよ。また行きたいな」「フィラデルフィアで美味しい寿司屋はどこ?」等の質問をもらえればいい方で(それでもそこまで会話が長続きする保証はない)、さして関心を示してもらえない場合もあります。

そうやって同じような会話を繰り返していくことに疲れ、名前を覚えられないストレスを感じ、パーティー続きで体力を奪われ・・・といった日々が当初続いていきます。

そんな日々を過ごす中、入学から3週間程経った時に実施されたSmall Group Dinnerが印象的でした。10人程の同級生がアパートに集まり、2年生が1人ファシリテーターをするという形式だったのですが、ありきたりな自己紹介ではなく、より個人の深い部分を理解できるような質問が用意されていました。例えば「辛かった経験とそこからどう立ち直ったか」といったお題で1人ひとりが語ったのですが、辛い経験を思い出して泣き出す学生がいました。経歴だけ見ればHarvard学部卒・Wharton MBAでエリート街道を突き進む彼女が見せた涙は、とても印象的でした。あまりに深い話で掛ける言葉が見つからないほどだったのですが、「Vulnerableになる、とはこういうことか」と納得がいったのと同時に、「Vulnerabilityを受け入れられる人間になるにはどうすればいいのか」という課題が浮かんだ夜でもありました。

自分の過去・現在・未来を話す機会に多くの学生が参加する

Small Group Dinnerは学生全員が通る道ですが、必ずしも泣くような話をする必要はなく、ファシリテーターの力量にもよるので皆が皆特別な時間を過ごすとも限りません。雑談で終わる場合もあるとは聞いています。それでも、このような体験をした人もしなかった人も「Vulnerableになること」というキーワードを時々口にしますし、実行もします。

例えば、Storytellers。クラブの一つですが、1ヶ月に1度開催される集まりでは自ら手を挙げた学生がその日のテーマに沿った話をして、皆がそれを聞きます。Small Group Dinnerでの彼女の話のように、壮絶な人生の話、家族の話等が多く含まれます。でも、それを彼ら・彼女らは話すのです。そして聴衆である学生は真に共感しエールを送るのです。

他にも、P3というプログラムがあります。6人1グループで6週間連続で3時間の集まりを持ち、「文化や家族が自分に与えた影響」「自らが幸せと感じること」「人生で成し遂げたいこと」等を話します。全員に課題図書が与えられ、その本に基づいて例えば「『貧乏だが家族に囲まれた石切工』と『キャリアで多くを達成しているが家族と会う時間がほとんどないテニスプレーヤー』のどちらが幸せだと思うか、そしてなぜ自分はそう考えるのか?」といった内容の議論をします。

また、お遊びの旅行中にもこういった会話が登場することがあります。キャンパスから遠く離れた場所で、リラックスして、お互いの人生について語る。ただし、決して深い話を強制はしない。こういった場が多く用意されているのがWhartonの特徴だと思います(他の学校もそうなのかもしれませんが)。

コンテクストを共有する一方で多様性に溢れた人々と話すことに意味がある

では、なぜそれが自分にとって意味のある体験だったのか考えてみたいと思います。冒頭で述べた通り、MBA留学にあたって一通り考えた内容の筈です。そこから短期間で大きく自分という人間が変わる訳ではありません。

でも、やはり出願プロセスにおいて使ったのはあくまで「使える」ストーリーであり「合わせにいっている」夢だったと思います。本当は根源的に自分が喜びを感じることややりたいことがあっても、それを抑えたり気付かなかったりしていることって、案外あるんじゃないかなと思います。それを考えること、他人の話を聞いて相対化することに意味を感じました。

また、全く関係のない他人と話している訳ではなく、Whartonという学校に同じタイミングで在籍している同年代の友人と、同じ本を読んだり似たような経験をした上で比較するアウトプットというのは、自分の過去・現在・未来を考える上でのベンチマークとしてちょうどいいと思います。

あくまでWhartonがSafe Spaceであることの効果も大きいです。Vulnerableな話については、厳にその場限りにするというルールがあります。同じ話を職場でしたら「ヤバい奴いるな」とレッテルを貼られて噂になったり、昔からの友人に話しても「なんかアツく語っているな」と思われたり、そういったリスクが少なからずあると思うんです。でも、Whartonはそうではない。夢を応援する場であり、Vulnerabilityを受け入れる場であるのです。そういった場所で、同級生と大いに語り自分の人生について考えたことは、本当に大きかったと考えています。

ある夜、仲のいい友人と私の自宅で2人で飲みながら将来について話していました。私がある拍子に「今マネジメントになったとしたら、やっぱり厳しいかな・・・」といったことを話したときに彼はこう言いました。「君のような人間ができなかったら誰ができるんだ?誰もが入れる訳ではない学校に選ばれて入学しているんだから、君ができないって言ったらダメだ。僕はそういう気持ちで将来を考えている」と。非常に青臭い話、且つエリート意識にまみれた醜い考え方と思う方がいらっしゃるかもしれません。でも、「自分には出来る」というマインドセット、そして困難を受け入れる心構えを彼は与えてくれました。

このような体験が多くあり、その積み重ねで自分の考え方が変わっていったことは事実です。

さいごに

ここまで、一個人の意見として 「人生について深く考える時間をしっかりと持てたこと」 について言語化してみました。冒頭で触れた通り、「それだけでは学費が正当化されない」と思われる方もいるかもしれません。でも大丈夫です。私にとって、「人生について深く考える時間をしっかりと持てたこと」が現状MBAに行って最も良かったことだと思う一方で、授業での学び・教授との会話による気付き・リクルーティングのリソースの充実・課外活動でのチャレンジ等は言うまでもなく素晴らしいものです。ただ、入学時点では微塵も考えなかった「人生について深く考えること」という青臭い内容の効用が、思った以上に大きく今後の人生に影響しそうだと感じています。

卒業後、語り合った同級生と頻繁に会うことはなくなると思います。家庭や仕事に忙しくなる中で、どれだけ彼ら・彼女らとじっくり時間を過ごせるかは分かりません。そもそも無理かもしれません。

でも、Small Group Dinnerでの彼女の涙を(そしてそれを受け入れることのできなかった自分を)、Storytellersで衝撃を受けたあの話を、旅行先で語り合ったあの夜を、友人が私に喝を入れたあの瞬間を、今後も思い出して自分の糧にしていくという確信を、強く持っています。

おわり