必要単位数
ウォートンでは 卒業までの2年間に最低19単位(Credit Units)の取得が必要とされます。1年目からFlexible CoreやElectiveの授業を履修することが可能ですし、Fixed Coreの授業でも入学前にWaiver Examを受験し合格すれば受講を免除されます。このように、Whartonのプログラムは各学生の目的がレベルに合わせて柔軟に受講科目を選択することが出来る点が特徴です。
通常1 Quarter = 6週間(1コマ1時間20分の講義が週2コマ-月・水曜または火・木曜)の講義を受講すると0.5単位もらえます。1 Semester = 12週間の講義だと1単位に相当します。授業は月曜日から木曜日までで、授業のない金曜日はお休みということになるのですが、ラー ニングチームミーティングなどが入ることが多いほか、就職活動に活用するケースも一般的です。
(参考)卒業必要単位
- 必修(Fixed Core):3.25単位
- 選択必修(Flexible Core):6.25単位
- 選択(Elective):9.5単位: うち5~6単位は専攻を構成 (一部必修科目を加算可能)
- 合計19~21単位: 21単位を超える講義を受講するには、追加の授業料を支払う必要あり
成績の判定基準
成績はA+ ~ D-及びF(failing) の計13ランクに分かれてつきますが、クラスの大半はB-以上になります。普通にやっていればFがつくことはまずないと言われますが、教授によっては平気でFを付ける人もいますので、余り甘く見ないほうがいいかもしれません。上記に加え、クラスの下位10%に入ってしまうと、LT (lowest 10%) という称号が付けられてしまいます。単位期間中に一定単位以上のFやLTを取ってしまうと、大学から警告を受けたり、最悪の場合には放校処分にされたりしてしまうこともあり得ますので、注意が必要です(もっとも、まともに試験勉強をしていればまず関係ないでしょうが・・・)。なお、GPAの計算の際は、A = 4, B = 3, C = 2, D = 1, F = 0, + (plus) → プラス0.33, -(minus) → マイナス0.33ポイントとしてカウントされます。例えば、B+ は3.33 ポイントです(ただし、A+のみAと同じで4ポイント換算)。学校側の規定により、教授はクラスの平均点が3.33以下となるように評価を設定するよう取り決められていますので(教授間の評価をそろえるため)、大体の科目でクラスの平均がB+程度になっています。
成績の判定基準は、日本の大学と比べるとはるかに明確かつ客観的です。例えば、グループレポート20%、個人レポート20%、クラスパーティシペーション(出席、授業中の発言等。後述) 20%、小テスト10%、期末試験30%といった具合に、コースの初めに教授から判定基準が示されます。ただし、各項目のウェイトについては科目の特性や教授の方針によって千差万別です。ファイナンス、アカウンティング、統計等の講義中心の科目では試験、宿題のウェイトが高い一方で、マネジメント、マーケティング等のディスカッション中心の科目ではレポートやクラスパーティシペーションのウェイトが高くなります。
クラスパーティシペーションについては、日本の出席点とは異なりクラスでの発言が要求されます。評価されるのは、発言時間よりも発言の内容です。最初のうちはなかなか思うように発言できずはがゆい思いをするかもしれませんが、発言するようにしてみましょう。自分が当たり前に思っていることでも、他学生にとって新鮮な意見というものは存在します。また幸いなことに、1回も発言しなくても真面目に出席してさえすれば、例えば計20%のクラスパーティシペーションとして10-15%位はもらえるので、基本的には1回も発言しなかったからというだけで単位を落とすことはありませんし、発言がなくとも試験やその他の課題に秀でていれば高い評価がつくこともあります。
必修科目と選択科目
ウォートンのカリキュラムの従来の基本的な考え方は、1年目に必修科目を通してビジネスの基本を網羅的に学び、2年目には豊富な選択科目の中から自由にコースを組み立てていくことで、各自の選択したメジャーの分野に関してより深い知識・理解を獲得する、というものでしたが、昨今はよりFlexibilityが重視され、1年生でも選択科目を履修することが可能です。また、必修授業についてもFixed CoreとFlexible Coreに分かれており、各学生が目的とレベルに合わせて柔軟に履修科目を選択することを可能としています。必修科目についてはこちらに、選択科目についてはこちらに、それぞれ詳細な説明があります。
Waiver制度について
ウォートンの基本カリキュラムでは、2年間の約半分が必修科目の履修に費やされます。そこで、必修科目ばかりでは耐えられないという人のために、「履修免除登録(Waiver)制度」が設けられています。これは、書類審査または筆記試験で一定の基準をクリアーすることで、その科目(必修)の履修が免除されるという制度です。ウェーブしても卒業に必要な総単位数(19.0cu)自体は変わりませんが、必修科目が減る分、選択科目をより多くとれるというメリットがあります。以前に大学などで既に勉強したことがあり、特にもう一度勉強したいと思わないような科目があれば、是非ウェーブすることをお薦めします(ただし、必修科目はどれもビジネスの基礎をなす内容だから、あるいは自分が得意な分野でラーニングチームに貢献しておきたいから等の理由から、あまりウェーブし過ぎない方がよいという意見もあります)。なお、定員に空きがあれば、一旦ウェーブした科目を取り直すことも可能です。ただし、もちろん自分が一つもウェーブしないからといって、心配する必要はありません。実際、全体で約35~40%の学生は一つもウェーブしないとのことです。
ウェーブする際の注意事項
1年生の場合、せっかくウェーブやアクセレレート(accelerate:完全に科目が免除になるわけではないが、半期の科目を四半期に縮めるなどした速修コース)したのに、空いた枠にうまく選択科目のクラスを入れられない、というケースがよく見受けられます。これは、基本的に四半期単位となっている必修科目と異なり、選択科目(特にファイナンスやアカウンティング)は半期単位の科目が多いため、時間割、及び四半期毎のワークロードを調節するのが困難だからです。例えばアカウンティングでアクセレレートした結果、Q1からQ3で取るべきアカウンティングの科目が全てQ1,2の間に終了し、Q3に一コマ空きが出来たとします。この空きコマを選択科目で埋めようとしても、Q4の同じ時間帯が空いていない(Q4では同じ時間帯に別の必修科目が設定される)ため、希望する半期単位の選択科目が取れないといった事態が生じえます。ですので、ウェーブ及びアクセレレートする際は、Q1とQ2もしくはQ3とQ4共に同じ時間の授業のスロットが空くようにする、などすると、受講可能な選択科目の幅がより広がります。
以下は、Class of 2008の体験談ですが、2020年現在でも、同様のメリット・デメリットがありますので、ぜひ参考にしてください(ただし、2020年現在、ストラテジーの授業はラーニングチームでのグループワーク無し)。
Class of 2008 ウェーブ体験談
私は、一年時に必修科目の約半分をウェーブしました。勉強量、クラスメートとの接点など、正直どうなるか不安だったのですが、意外と満足のいく結果に終わったので、ひとつの選択肢としてご紹介したいと思います。
ウェーブのメリット/デメリットについては既に多くの人が書いているので、多くのコースをウェーブした場合にどうなるか、という点に限って述べたいと思います。多くのコースをウェーブする長所で強く感じたのは、1) 取れる授業に幅がでる、2) 一年目のワークロードを分散できる、の二点です。
1) は言わずもがなだと思うのですが、ウォートンの選択科目は非常に幅が広く、興味関心のある分野を非常に深いレベルまで学ぶことができます。必修科目で基礎を再習得するのも意義があると思うのですが、大学、業務である程度の知識を持っているのであれば、ウォートンでしか学べない事に挑戦する事も非常に意義のあることではないかと思います。取れる選択科目は必修科目の時間割に制約されるのですが、必修科目と授業時間の重複がある場合必修科目を他のスロットに変更してくれるケースもありますので、ある程度ウェーブすれば、かなりの選択肢が手に入ります。
2) は当初想定していなかった点なのですが、選択科目を取ることで忙しい時期が分散されます。必修科目カリキュラムは各授業の中間、期末が同じタイミングであるので、ある時期に試験、宿題が非常に集中します。一方で選択科目は、期末にレポートを出せばいい授業、通期でプロジェクトを行う授業など、コースによって忙しくなる時期がばらばらで、しかも試験のタイミングが必修科目と一週間ほどずれています。結果、全体としての勉強量は変わらないのですが、一日に2つも3つも試験があるという状況を避けられるので、余裕をもって色々な活動ができます。特にQ1,Q2は就職活動の時期となるので、この時期にスケジュールに余裕があることは非常にプラスとなりました。一方で、多くのコースをウェーブするデメリットは1) クラスメート、特にラーニングチームとの接点が減る、2) 必ずしも希望する選択科目はとれない、の2点です。選択科目をとると、ラーニングチームとの接点は確実に減ります。私の場合、ラーニングチームとのグループワークはマーケティングとストラテジー, リーダーシップのみでした。とはいえ、アカウンティング, ファイナンスの場合、ラーニングチームといっても単純に作業を分担するだけで終わるチームも多かったようなので、チームとの関わりとしてはちょうどいい量だったのではないかと思っています。また、選択科目のコースでは各授業でチームを作るので、同じくウェーブをしている他のクラスの1年生、あるいは2年生と知り合い、チーム活動をすることができたので、増えた接点も多かった気がします。
2) は選択科目の選択肢の話で、選択科目のオークションはシステム的に2年生が優先されており 、しかも2年生は大量にオークションポイントを持っているので、一年生が人気授業をとることは難しいです。従って、一年生の間にとる選択科目は、人気講師の裏にいる教授の授業、マイナーな分野で自分が関心を持つもの、などが主になります。それでも総じて質は高いものが多いです。以上長くなりましたが、何をやりたいかある程度明確であれば、個人的にはウェーブをする事をお勧めします。ウェーブの申請、試験がプレターム(Pre-Term:後述)中で、迷うことも多いと思うのですが、選択肢が気に入らなければ必修科目を履修することにすればよいだけですし、ウェーブの試験準備は、中間試験や期末試験の準備に比べればはるかに楽なので、夏休みの週末、ちょっとがんばってみてください。
専攻 (Major)
ウォートンの特徴の一つとして専攻(Major)の設定が挙げられます。現在19のメジャーがオファーされており、またそれ以外のメジャーを自分で独自に作成することも可能です(individualized major)。通常は5単位以上の専門科目の履修が必要となりますが、うまく履修すると複数の専攻を同時に取得することも可能です(double major)。日本人ではファイナンスメジャーが多い傾向にありますが、マネジメント、マーケティングなど他のメジャーを志向する人も増えています。また最近、留学生にはBusiness Analyticsメジャーが人気です。Business Analyticsは米国ではSTEM (Science, Technology, Engineering, and Mathematics)分野に入り、卒業後米国で就職する場合、ビザなく働ける期間が長くなるなどのメリットがあり、人気メジャーとなってます。
ウォートンでは、数多くの選択科目の中から、また、場合に応じて他学部の科目からも、幅広い選択が可能となっています。必修科目の修了と共に、または必修科目の履修と並行して、専攻や自分の興味に応じてオリジナルのカリキュラムを作り上げていくことも可能です。https://mba.wharton.upenn.edu/academics/curriculum/majors/
何をウォートンで学ぶか?
ウォートンがファイナンス分野において極めて高い評価を得ているのは広く知られていますが、Business WeekやUS News & World Report等のランキング評価を見ても分かる通り、実際にはFinance以外の分野においてもウォートンは非常に高く評価されています。例えば、近年ではビジネス全体におきデータの重要性が増しており、企業からはデータを分析する力を持つ人に対する需要が高まってます。その環境下、ウォートンはBusiness Analytics MajorやWharton Customer Analytics Initiativeなどを立ち上げることによってData Analyticsに力を入れてます。この努力の結果、Wharton生は企業から「データに強い」という評判を得てます。
もしも「ファイナンス」のバックグラウンドがなく、ウォートンを選択することに対し不安を感じている方がいらっしゃるとしたら、心配は無用です。ファイナンスをメジャーにしない仲間を沢山見つけることができるでしょう。このことは、卒業生の就職先データからも伺えます。従って、あなたの学びたいことがファイナンス以外であったとしても、ウォートンを避ける理由はありません。