在校生ブログ

Elective coursesご紹介: Strategy and Competitive Advantage

2015.11.13 Category:授業: Electives

こんにちは、Class of 2016のY.Oです。前回の投稿ではWhartonの授業以外のリーダーシッププログラムについて紹介させて頂きました。今回は今履修しているStrategyのElective Courseについて紹介させて頂きたいと思います。

今履修しているのはMGMT701: Strategy and Competitive Advantageという授業です。この授業はManagementのCore Courseの上位クラスにあたり、Five Force AnalysisやActivity SystemなどのMichael Porterの戦略論をベースに過去の企業の行動を分析し、そこから何が学べるかを毎回の授業で議論します。この授業を担当するのはProf. Nicolaj SiggelkowというWhartonのManagement Departmentの看板教授です。Prof. Siggelkowは学生からの評価が高い教授に毎年贈られるTeaching Awardを頻繁に受賞しており、定員60人程度の授業に70人以上のwaitlistが出る人気教授です。教授とカジュアルに話せるLunch Session(これもメールで案内が来て10分程度で満席になりました)で聞いた話しでは、教授はこの授業を15年以上続けており、毎年少しずつ授業内容に手を加えているようです。

この授業で扱ったトピックを一つ例を紹介すると、よく耳にする企業の競争優位という言葉。競争優位とは何か?製品が優れている、マーケティングがうまい、値段が安い、など色々あると思いますが、これがはっきりと定義できなければ、単純に自社の競争優位を構築する戦略を作るといっても軸がぶれたものになってしまします。以下の図を見てください。Blog 2

Willingness-to-Pay (WTP)とは消費者がその製品に対して払っていいと考える最大額、Pは製品の価格、Cはメーカーがその製品を作るのに必要なコスト、Supplier Costは製品の部品等のサプライヤーのコストです。この図は1つの製品のバリューをどのプレーヤーが取っているかを表しています。WTP – Pは消費者が得るバリュー、P – Cはメーカーが得るバリュー、C – Supplier Costはサプライヤーが得るバリュー。世の中には数多くの製品が存在するので、この図のようなセットが無数に存在することになります。この授業ではメーカーの競争優位を自社と他社のWTP – Cの差、つまり自社の製品が他社と比べてどれだけ大きな消費者のバリューとメーカーのバリューを作り出しているか、と定義しています。製品価格Pの高い安いは本質的な問題ではなく、いくら価格が安くてもWTPも低ければ競争優位性も低いことになります。競争優位性を高める方法は2つ。消費者のWTPを上げる、メーカーのコストCを下げる、です。授業ではこのフレームワークを用いて、アメリカの高級スーパー(Trader Joe’s)やプラスチックの射出成型メーカー(Husky)の戦略を学び、企業の競争優位性というものへの理解が深まりました。

Prof. Siggelkowは日本に対する理解も深く、東京でセミナーを開いたこともあります。授業でも日本のケースが3回使われます。1回目は任天堂で、家庭用ゲーム機器業界でどう強固なポジションを築いていったかを議論しました。2、3回目ではホンダのケースを2つ扱い、なぜホンダの二輪事業がアメリカで成功しNVTというイギリスのバイクメーカーが負けたのかを議論しました。これだけ日本企業が扱われるのはWhartonの授業の中でも珍しいと思います。

ホンダのケースで興味深かったことは、2つのケースともホンダが1960~1970年代にアメリカの二輪市場で成功した事例を扱っているのですが、一方は1975年の大手戦略コンサルティングファームによる分析結果を元にしたもの、もう一方はホンダの当事者に直接インタビューした結果を元にしたものであること。前者ではホンダがアメリカ市場でシェア拡大を追求する戦略を取ったことが一番の成功要因と書かれており、後者では初めから決まった戦略というものはなく試行錯誤した結果なんとか成功できた、という口調で書かれています。どちらが正しいのでしょうか?結論は、どちらも正しいです。ここでの学びは、過去の事例を経済学の理論を用いて分析した結果見出された戦略は必ずしも当事者が当時考えていた戦略と一致しないということです。では過去の事例から学んでも将来に活かせないのかというとそうではありません。過去の事例は今後の戦略を立てるのに有効ですが、重要なことは事業を進めていく中で出てきた新たな発見や事業環境の変化に柔軟に対応し、絶えず戦略を修正していくことです。ホンダのケースに出てきたNVTの失敗事例からも柔軟な対応の重要性が分かりました。失敗する企業の問題点として、Perception Problem(競合に後れを取っていることに気付かない)、Knowledge Problem(何をすればいいか分からない)、Motivation Problem(すべきことは分かっているが、行動に移さない)、Implementation Problem(行動を起こしたいが起こせない(社内政治等のため))があることを学び、確かにNVTにもこの4つの問題点が当てはまっていました。

戦略の授業と聞くと何を学ぶのかよく分からないという印象を持たれるかもしれませんが、フレームワークを用いて企業の行動を分析したり、過去の企業の成功・失敗例を色々な角度から見ることで、自分が会社の戦略を考える際に有効なヒントをもらっていると感じています。

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