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COURRiER Japon「ウォートンに聞け!」35歳でウォートンの終身教授に!ベストセラー作家でもあるアダム・グラントの授業を受けてみたら

2017.02.02 Category:受験生向け/お知らせ

2016年4月からCOURRiER Japonにて連載の「ウォートンに聞け!」最新記事は、Wharton名物教授の1人であるアダム・グラント教授の授業に参加した在校生からのレポートです。入学後すぐに受講するマネジメントの授業についても雰囲気も感じて頂ける内容となっていますので、受験生の皆様もぜひご覧ください。

【COURRiER Japon 連載】ウォートンに聞け!

35歳でウォートンの終身教授に!ベストセラー作家でもあるアダム・グラントの授業を受けてみたら

嶋原佳奈子 沖縄県生まれ。2009年京都大学総合人間学部卒業。同年、伊藤忠商事株式会社入社。情報通信部門にて出資先の事業開発に従事した後、2013年よりNPO法人クロスフィールズにて組織運営、および新興国NPO支援と日本企業の人材育成プログラム構築に携わる。2016年ウォートンスクール入学、2018年MBA取得予定。

PHOTO: THE WHARTON SCHOOL, COURRiER Japon

ウォートンの人気教授に、アダム・グラントがいる。デビュー作である著書『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』は、日本を含め世界27ヵ国語に翻訳されるベストセラーとなった。そして、続く『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』も反響を呼んでいる。今回は、ウォートン入学早々に彼の授業を受けた日本人留学生からのレポートをお届けする。

ウォートンでの留学生活も半年が過ぎ、入学前に想像した以上に、学校の提供するリソースの豊富さに驚いている。世界トップレベルの教授陣はまさにその最たるものだが、なかでも35歳という若さでウォートン史上最年少の終身教授となったアダム・グラント教授を紹介してみたい。グラント教授は組織心理学者であり、「フォーチュン」誌の「世界で最も優秀な40歳以下の教授40人」に選ばれるなど多数の受賞歴を持つ。また、グーグル、ウォルト・ディズニー、ゴールドマンサックス、国連などの世界の名だたる企業や機関にコンサルティングをしている。

『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』は、Warby Parker(ワービー・パーカー)というオンライン眼鏡販売ベンチャー企業への投資話で始まる。教授は、当時ウォートンの学生だった創業者の1人から投資の話を持ち掛けられる。後にこの会社は「アイウェアのネットフリックス」とも呼ばれるほどに成功するのだが、教授は投資を断ってしまった。というのも、彼が考えていた「起業を成功させるために必要な選択」と「創業者たちがとった選択」が異なっていたからだ。「創業者たちは、起業アイディアに専念しておらず、平行して就職活動もおこない、ゆえに会社設立の準備も遅れがちになっていた。彼らは成功に必要とされるリスクを充分とっていない」と教授は判断した。

起業家がオリジナリティを発揮し成功するには徹底的にリスクを冒すことが必要だ、という通説に従ったのだ。しかし、この判断は失敗に終わった。この経験をきっかけとして、教授はこれまで信じてきたこととは違うメカニズムがあることに気づく。では、オリジナリティを発揮するためには何が必要なのだろうか?

ある研究によると、使っているウェブブラウザの種類によって、その人のオリジナリティがわかるという。ここでは、ブラウザの種類自体が問題なのではない。あらかじめインストールされているブラウザを使うか、自発的にほかのブラウザをインストールして使っているか、という行動様式の違いがポイントである。つまり、オリジナリティの最たるポイントは、既存のものを疑い、よりよい選択肢を探して自ら働きかけをおこなっていくところにある。

また、優れた創作者であっても、生み出す作品の多くは、同じ分野に取り組むほかの人たちの正品と質の面で大きな違いはない。それよりも、「圧倒的な生産数」がオリジナリティの高い作品の生まれる確率を高くするのだという。たとえばモーツァルトやベートーヴェンも、傑作よりはるかに多くの“注目されなかった作品”を生み出している。この著書を通じて、グラント教授は、「オリジナリティのある人たちは私たちが思うよりもずっと普通の人たちであり、誰もが『オリジナル』になれるのだ」と主張する。

オリジナリティを発揮して成功する人も、普通の人と同じように恐れやためらいと戦っている。それでも同調圧力に反して行動を起こし、その後に失敗したとしても、「やってみないこと」のほうに後悔する。こういったことを身をもって知っている点が違うのだ。

教授の恐るべき記憶力

私は幸運にも、ウォートン入学後初めての授業をグラント教授から受けることができた。「Foundation of Teamwork and Leadership」という5日間集中型のこのコースは、初めてのクラスメートとの授業ということもあり、もっとも緊張と期待に溢れたものだった。コースは午前にレクチャー、午後にラーニングチーム(5~6名からなる必修科目向けのグループ)を組んで電気自動車会社の経営シミュレーションをする、という構成。午前中に紹介されたコンセプトを午後のシミュレーションで実際に経験し、振り返ることで身につけていくというアプローチをとる。

まず驚いたのは、教授がコホート(必修科目を一緒に受ける65~70名のクラス)全員の名前とバックグラウンドを正確に覚えていたこと。「君がいたデロイトではどういうリーダーがいた?」「シリアルアントレプレナーだった君は、こういう場面でどう対応した?」と実体験を引き出しながら議論を進めていったのだ。

一人ひとりの発言を注意深く聞き、そこからさらに内容を深めていく。これが連鎖し、学生のほうもそれぞれの会社の方針・戦略を自分なりに理解する。さらに、それを踏まえて「自分がどういったリーダーシップを発揮したか」という視点の発言をするようになる。こうして非常に有意義な議論になっていった。

また授業では、ビジネスにおける感情のコントロールの仕方、チームでの意思決定の方法、チーム内の対立の乗り越え方、一般企業における組織文化の重要性なども学ぶ。一般的に、これらは正解が曖昧になりがちなテーマであるが、教授は自身のコンサルティングの経験から、実際の企業でのケースを引用したり、定量データをもとにしたりと、曖昧さを残さなかった。

一つ印象に残っている場面がある。経営シミュレーションで、CEOを選んだ翌朝のレクチャーでのこと。教授は各チームで選ばれたCEOの男女比率のデータを見せながら、「CEOに選ばれるのは(クラス内の男女比率を考えても)必ず男性のほうが多くなる。これは毎年現れる傾向なんだが、いったいなぜなんだ?」と問いかけた。一般論としてではなく、自分たちが前日に下した決断に対して明確な事実を突きつけられたことで、教室内はシンと静まり返ったことを覚えている。

米国人も空気を読む!

また、チームワークを取り上げた際には、Groupthink(集団思考:グループでの意思決定において不合理な決定に陥ること)という傾向に警鐘を鳴らし、少数派の意見を聞くことの重要性が強調された。これも、「言うは易し行うは難し」。経営シミュレーションにおいて、「新規参入する海外マーケットを選ぶ」というミッションが与えられた際には、ほぼすべてのグループがGroupthinkに陥ってしまった。

シミュレーションにおいては、各メンバーが異なるマーケットの情報を与えられ、各自の情報を持ち寄って参入すべきマーケットを決定する。そのなかに有力にみえる情報があり、それをグループの多数が信じると、少数派の意見は合理的であっても聞かれず、チームとして誤った決断に至ったのだ。だが実は、一見すぐに候補から落とされそうな別のマーケットが、この会社にとってはベストな選択だったことが、後から判明したのである。

またウォートンに来てから、「空気を読む」というのは日本に限らず米国にもあると感じるようになった。皆がある案についていいねと盛り上がって進むとき、水を差すことは米国人でも避けがちになる。著書『ORIGINALS』にある「同調性の圧力」は明らかに存在するのだ。

グラント教授「僕は内向的な人間」

最後に、授業全体を通じて印象に残っているのが、教授自身が理論を唱えるだけでなく、体現していたところだ。

たとえば、自己認識とパーソナリティタイプの授業において、授業をビビットなものにすべく外交的な人間のまね(興奮して机をひっくり返してしまうというアクションつき)をして見せたと思えば、こんなふうに自身を明かした。「僕は内向的な人間。人前で話すのは苦手だし、初めて教鞭をとったときにはずっと手が震えていた、と生徒に言われた。いまでも毎回緊張するね」

グラント教授は授業や著書を通して、こんなことを伝えている。「優れたリーダーシップやチームワークは、マジックではなくスキルセットである」「根拠に基づいた経験を積むことと、実践やフィードバックによって“知っている”と“できる”の間のギャップを埋めることが重要」そして、「独創性は特別なものではなく、体得できるものである」といったことだ。教授自身も現状の地位に甘んじることなく、つねに自分を受け入れ、そのうえでストレッチをかけ続けているように見える。

私自身、当初グループワークでは自然と「空気を読んで」しまうことが多かったが、授業を受けて以来、常にこれでよいのかという視点を持つようになった。そして、ときには流れに逆らって、反対意見を明確にメンバーに伝えるようになった。チーム内が張りつめた空気になることもあるため、そうするにはいつも勇気がいる。けれど、後から「あれはよかったよ」と評価されることもある。

小さな変化かもしれないが、体得を信じて行動を起こすことが、すべての第一歩かもしれない。

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