Elective coursesご紹介: Managerial Decision Making

こんにちは、Class of 2016のKNです。

今回は、人気授業の1つであるManagerial Decision Makingのご紹介をしたいと思います。この授業は、心理学や行動経済学の知見を学ぶ授業で、下記2つを目的としています。

  • 学生の意思決定の質を上げること。意思決定をする際に起こりがちなミスやバイアスを理解することで、より質の高い意思決定を出来るようになることを目指します。
  • もう一つは、他人の行動を予測し、それに影響を与える能力を高めること。こちらも、人間の意思決定や行動を理解することで、他人をうまくモチベートし、影響を与えていけるようになることが目標です。

いずれも、卒業後リーダー・マネージャーとして経営に関わっていく身として、とても大切な能力だと思います。講義が中心の授業ですが(ケースはありません)、授業前や授業中に様々なエクササイズに取り組み、より「身に染みる」形で学びを進めていけるようにうまく設計されています。

例えば、下の図を見てみてください。これは、第二次世界大戦中のロンドンでの爆撃地をプロットしたものです。左上にはRegent’s Park、右下にはRiver Thamesが見えます。ここから、何が読み取れると思いますか?

London

(出所Thaler and Sunstein, Nudge, page 28)

爆撃は、左上と右下に固まっています。何か軍事上・政治上重要な拠点があったのかもしれません。もしくは、比較的爆撃の少ない右上と左下には、敵国であるドイツのスパイが潜伏していて、爆撃を避けたのかもしれません。そうであれば、スパイの掃討作戦を展開するべきなのかも。

私はWhartonに来る前に戦略コンサルティングファームで働いていたこともあり、上記のような発想は極めて自然な発想です。実際の戦略立案も、このようにファクトからインプリケーションを抽出し、アクションを考えるという行為を繰り返すことで進めていきます。

しかしこの爆撃、実は単なる偶然でこの図のように分布したのです。この時代、この図の範囲内で爆弾を狙ったところに落とす技術はなく、着弾地のパターンは単なる偶然の結果にすぎませんでした。

これは、人は「ランダム」にたいして偏った印象・先入観を持っていて、そうではない事象に遭遇するとなんらかのパターンや規則を見出してしまう傾向にあることを示しています。逆に、まっさらな四角形の中にランダムに点をプロットしてください、という課題を与えられたら、ほとんどの人がこの図よりももっと「ランダムっぽく」、まばらにプロットしてしまうと思います。

僕が仮に当時のイギリス政府のコンサルタントで、この図を入手していたら、間違いなく前述のようなアドバイスをしたと思います。ですので、個人的にはとても印象に残りました。

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もうひとつ、事例をご紹介します。この授業の課題で、以下の質問を20人以上の友人にして結果をまとめる、というものがありました。

質問:あなたは、僕(KN)がこれまで訪れた国(少なくとも一泊以上した国) の数はxx以上だと思いますか?それ以下だと思いますか?僕(KN)が訪れた国の数を推測して、答えてください。

このように、何らかの数を推測してもらう質問なのですが、その中身はなんでもよく、例えば「昨年の米国製薬会社トップ5社の研究開発費」とか「日本にある温泉地の数」などを質問にした人もいました。

この質問のキモは、「xx」の部分です。実は、半分の回答者には、

質問Aあなたは、僕(KN)がこれまで訪れた国(少なくとも一泊以上した国) の数は10以上だと思いますか?それ以下だと思いますか?僕(KN)が訪れた国の数を推測して、答えてください。

もう半分には、

質問Bあなたは、僕(KN)がこれまで訪れた国(少なくとも一泊以上した国) の数は65以上だと思いますか?それ以下だと思いますか?僕(KN)が訪れた国の数を推測して、答えてください。

という質問をしています。はじめに提示される数字が「10」か「65」かで、回答にどのような影響がでるかを調べているのです。もちろんこの数字には何の根拠もありませんので、本来であれば回答に影響を及ぼすのはおかしいのですが、結果は以下のようになりました。

Countries

このように、初めに与えられた数字が回答に大きく影響を及ぼすという結果になりました。

これは比較的有名な、「アンカリング」と呼ばれる現象です。何か数字にまつわる意思決定をする際に、事前に何らかの数字(アンカー)を与えられると、その数字に意思決定が影響を受けてしまう、というものです。

経営の現場では、例えば、担当者が作成してきた投資計画の採用可否を判断しなくてはならない場面を想像してみてください。担当者は、出来る限り魅力的に見えるよう、その投資の収益性や成長性をはじき出してくるでしょう。あなたは出来る限り客観的にその計画を評価しなくてはいけません。気を付けないといけないのは、担当者が提示した収益性や成長率の数字が、すでにアンカーになってしまっていることです。あなたが「普通の」人間であれば、知らぬ間にそのアンカーに引っ張られてしまう可能性が高いのです。

このように、人間の意思決定における様々なミスやバイアス、傾向を学ぶことで、先に述べた2つの目的を達成することを目指します。「ケースを読み込んでがんがんディスカッション」とか、「コーポレートファイナンスの理論を精緻に学ぶ」といったビジネススクールといえば思い浮かぶ典型的な授業ではない、こんな授業も、Whartonでは展開されています。