「授業: Electives」カテゴリーアーカイブ

Elective coursesご紹介:Leading Effective Teams(後半)

Class of 2016のRJです。

以前(10/11)、私が受講している、Whartonの看板教授であるStuart Friedmanによる “Leading Effective Teams”の前半の内容について概説したが、授業が終わった今、後半の内容についても紹介したい。

まず、前半習得したフレームワーク(J. Richard Hackman)は「チーム・組織が効果的に機能するために必要な前提条件は何か?」という事を俯瞰的に捉えるためのものだったが、後半の習得内容は、「チーム内のコミュニケーションを向上させるために人はどう振舞うべきか?」という、着眼点を自分・個人の行動に向けたものだった。用いたのはSchwarz (Roger Schwarz著、The Skilled Facilitator)という組織内のコミュニケーション力向上に特化したコンサルティングやファシリテーターの育成を行っている組織心理学者のモデル。具体的には、どのようなMindset、Core Values、Assumptionsをもって人と対峙するべきか、どのように行動すべきか(8つの行動規範)という内容。規範自体は「理由・主旨を説明しよう」とか「必要な情報は共有しよう」とかかなり平易なものばかりだが、継続的に実践しようとするとわりとしんどい。

以前も書いた通り、本授業の良い所はAction Learningの徹底にある。まず、プロジェクトチーム内の対話は規範の利用が強制される。次に、授業中はランダムに複数人のグループを組み、規範を用いて対話し、対話を観察している同級生から評価を受ける。最後に、他授業のプロジェクトチームに於いてもモデルを用い、その結果を報告する必要がある。本授業に関わるチームでは、全員がこのモデルを理解し強制的に使おうとしているので、不自然ではあるがまだ成立する。問題は他授業のグループワークに於ける本規範の継続的使用で、心掛けていても気づくと過去の対話方法に戻ってしまっていた。だが、苛立ちながらも使用を試みたことで、8つの規範のうちどれが得意・不得意かは理解出来たので、次セメスターで組むグループワークに於いても引き続き磨きたいスキルである。

次に、Philadelphiaに現存するチームをHackmanモデルを用いて分析するというチームプロジェクトは上記と並行して進められた。Action Learningを通してモデルの使い方を習得したのは勿論の事、本プロジェクトに於いて、私は顧客(Penn MedicineのTrauma Surgical Unit(緊急医療チーム))とのインターフェイスを担当し、英語で且つ非営利組織とのやり取りという貴重な経験を積むことができた。この役回りを買って出たのだが、未経験の人間に躊躇なくやらせてくれるのはWharton学生の良いところだと思う。チームにとっては決して最適とは言えない挑戦をさせてくれるのは、学びの環境として非常に有難い。

最後に、授業最終日にクラス全員が一番のtakeawayを発表したのだが、私にとっては立ち止まる事の大切さだった。前職でも、最初は戦略立案をするのだが、途中躓いても筋肉で乗り切るような仕事の仕方をしていたが、本授業で、立ち止まる事、特にプロジェクトの中間地点で意識的に立ち止まり、戦略を見直すことの重要性を学んだ。教授が常々言っていた「Slow down to speed up」の実践方法を最後に理解した形だ。今後のチームワークに於いて、上記行動期間と合わせ、是非習得したいスキルである。

Elective coursesご紹介: Strategy and Competitive Advantage

こんにちは、Class of 2016のY.Oです。前回の投稿ではWhartonの授業以外のリーダーシッププログラムについて紹介させて頂きました。今回は今履修しているStrategyのElective Courseについて紹介させて頂きたいと思います。

今履修しているのはMGMT701: Strategy and Competitive Advantageという授業です。この授業はManagementのCore Courseの上位クラスにあたり、Five Force AnalysisやActivity SystemなどのMichael Porterの戦略論をベースに過去の企業の行動を分析し、そこから何が学べるかを毎回の授業で議論します。この授業を担当するのはProf. Nicolaj SiggelkowというWhartonのManagement Departmentの看板教授です。Prof. Siggelkowは学生からの評価が高い教授に毎年贈られるTeaching Awardを頻繁に受賞しており、定員60人程度の授業に70人以上のwaitlistが出る人気教授です。教授とカジュアルに話せるLunch Session(これもメールで案内が来て10分程度で満席になりました)で聞いた話しでは、教授はこの授業を15年以上続けており、毎年少しずつ授業内容に手を加えているようです。

この授業で扱ったトピックを一つ例を紹介すると、よく耳にする企業の競争優位という言葉。競争優位とは何か?製品が優れている、マーケティングがうまい、値段が安い、など色々あると思いますが、これがはっきりと定義できなければ、単純に自社の競争優位を構築する戦略を作るといっても軸がぶれたものになってしまします。以下の図を見てください。Blog 2

Willingness-to-Pay (WTP)とは消費者がその製品に対して払っていいと考える最大額、Pは製品の価格、Cはメーカーがその製品を作るのに必要なコスト、Supplier Costは製品の部品等のサプライヤーのコストです。この図は1つの製品のバリューをどのプレーヤーが取っているかを表しています。WTP – Pは消費者が得るバリュー、P – Cはメーカーが得るバリュー、C – Supplier Costはサプライヤーが得るバリュー。世の中には数多くの製品が存在するので、この図のようなセットが無数に存在することになります。この授業ではメーカーの競争優位を自社と他社のWTP – Cの差、つまり自社の製品が他社と比べてどれだけ大きな消費者のバリューとメーカーのバリューを作り出しているか、と定義しています。製品価格Pの高い安いは本質的な問題ではなく、いくら価格が安くてもWTPも低ければ競争優位性も低いことになります。競争優位性を高める方法は2つ。消費者のWTPを上げる、メーカーのコストCを下げる、です。授業ではこのフレームワークを用いて、アメリカの高級スーパー(Trader Joe’s)やプラスチックの射出成型メーカー(Husky)の戦略を学び、企業の競争優位性というものへの理解が深まりました。

Prof. Siggelkowは日本に対する理解も深く、東京でセミナーを開いたこともあります。授業でも日本のケースが3回使われます。1回目は任天堂で、家庭用ゲーム機器業界でどう強固なポジションを築いていったかを議論しました。2、3回目ではホンダのケースを2つ扱い、なぜホンダの二輪事業がアメリカで成功しNVTというイギリスのバイクメーカーが負けたのかを議論しました。これだけ日本企業が扱われるのはWhartonの授業の中でも珍しいと思います。

ホンダのケースで興味深かったことは、2つのケースともホンダが1960~1970年代にアメリカの二輪市場で成功した事例を扱っているのですが、一方は1975年の大手戦略コンサルティングファームによる分析結果を元にしたもの、もう一方はホンダの当事者に直接インタビューした結果を元にしたものであること。前者ではホンダがアメリカ市場でシェア拡大を追求する戦略を取ったことが一番の成功要因と書かれており、後者では初めから決まった戦略というものはなく試行錯誤した結果なんとか成功できた、という口調で書かれています。どちらが正しいのでしょうか?結論は、どちらも正しいです。ここでの学びは、過去の事例を経済学の理論を用いて分析した結果見出された戦略は必ずしも当事者が当時考えていた戦略と一致しないということです。では過去の事例から学んでも将来に活かせないのかというとそうではありません。過去の事例は今後の戦略を立てるのに有効ですが、重要なことは事業を進めていく中で出てきた新たな発見や事業環境の変化に柔軟に対応し、絶えず戦略を修正していくことです。ホンダのケースに出てきたNVTの失敗事例からも柔軟な対応の重要性が分かりました。失敗する企業の問題点として、Perception Problem(競合に後れを取っていることに気付かない)、Knowledge Problem(何をすればいいか分からない)、Motivation Problem(すべきことは分かっているが、行動に移さない)、Implementation Problem(行動を起こしたいが起こせない(社内政治等のため))があることを学び、確かにNVTにもこの4つの問題点が当てはまっていました。

戦略の授業と聞くと何を学ぶのかよく分からないという印象を持たれるかもしれませんが、フレームワークを用いて企業の行動を分析したり、過去の企業の成功・失敗例を色々な角度から見ることで、自分が会社の戦略を考える際に有効なヒントをもらっていると感じています。

Elective coursesご紹介: Managerial Decision Making

こんにちは、Class of 2016のKNです。

今回は、人気授業の1つであるManagerial Decision Makingのご紹介をしたいと思います。この授業は、心理学や行動経済学の知見を学ぶ授業で、下記2つを目的としています。

  • 学生の意思決定の質を上げること。意思決定をする際に起こりがちなミスやバイアスを理解することで、より質の高い意思決定を出来るようになることを目指します。
  • もう一つは、他人の行動を予測し、それに影響を与える能力を高めること。こちらも、人間の意思決定や行動を理解することで、他人をうまくモチベートし、影響を与えていけるようになることが目標です。

いずれも、卒業後リーダー・マネージャーとして経営に関わっていく身として、とても大切な能力だと思います。講義が中心の授業ですが(ケースはありません)、授業前や授業中に様々なエクササイズに取り組み、より「身に染みる」形で学びを進めていけるようにうまく設計されています。

例えば、下の図を見てみてください。これは、第二次世界大戦中のロンドンでの爆撃地をプロットしたものです。左上にはRegent’s Park、右下にはRiver Thamesが見えます。ここから、何が読み取れると思いますか?

London

(出所Thaler and Sunstein, Nudge, page 28)

爆撃は、左上と右下に固まっています。何か軍事上・政治上重要な拠点があったのかもしれません。もしくは、比較的爆撃の少ない右上と左下には、敵国であるドイツのスパイが潜伏していて、爆撃を避けたのかもしれません。そうであれば、スパイの掃討作戦を展開するべきなのかも。

私はWhartonに来る前に戦略コンサルティングファームで働いていたこともあり、上記のような発想は極めて自然な発想です。実際の戦略立案も、このようにファクトからインプリケーションを抽出し、アクションを考えるという行為を繰り返すことで進めていきます。

しかしこの爆撃、実は単なる偶然でこの図のように分布したのです。この時代、この図の範囲内で爆弾を狙ったところに落とす技術はなく、着弾地のパターンは単なる偶然の結果にすぎませんでした。

これは、人は「ランダム」にたいして偏った印象・先入観を持っていて、そうではない事象に遭遇するとなんらかのパターンや規則を見出してしまう傾向にあることを示しています。逆に、まっさらな四角形の中にランダムに点をプロットしてください、という課題を与えられたら、ほとんどの人がこの図よりももっと「ランダムっぽく」、まばらにプロットしてしまうと思います。

僕が仮に当時のイギリス政府のコンサルタントで、この図を入手していたら、間違いなく前述のようなアドバイスをしたと思います。ですので、個人的にはとても印象に残りました。

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もうひとつ、事例をご紹介します。この授業の課題で、以下の質問を20人以上の友人にして結果をまとめる、というものがありました。

質問:あなたは、僕(KN)がこれまで訪れた国(少なくとも一泊以上した国) の数はxx以上だと思いますか?それ以下だと思いますか?僕(KN)が訪れた国の数を推測して、答えてください。

このように、何らかの数を推測してもらう質問なのですが、その中身はなんでもよく、例えば「昨年の米国製薬会社トップ5社の研究開発費」とか「日本にある温泉地の数」などを質問にした人もいました。

この質問のキモは、「xx」の部分です。実は、半分の回答者には、

質問Aあなたは、僕(KN)がこれまで訪れた国(少なくとも一泊以上した国) の数は10以上だと思いますか?それ以下だと思いますか?僕(KN)が訪れた国の数を推測して、答えてください。

もう半分には、

質問Bあなたは、僕(KN)がこれまで訪れた国(少なくとも一泊以上した国) の数は65以上だと思いますか?それ以下だと思いますか?僕(KN)が訪れた国の数を推測して、答えてください。

という質問をしています。はじめに提示される数字が「10」か「65」かで、回答にどのような影響がでるかを調べているのです。もちろんこの数字には何の根拠もありませんので、本来であれば回答に影響を及ぼすのはおかしいのですが、結果は以下のようになりました。

Countries

このように、初めに与えられた数字が回答に大きく影響を及ぼすという結果になりました。

これは比較的有名な、「アンカリング」と呼ばれる現象です。何か数字にまつわる意思決定をする際に、事前に何らかの数字(アンカー)を与えられると、その数字に意思決定が影響を受けてしまう、というものです。

経営の現場では、例えば、担当者が作成してきた投資計画の採用可否を判断しなくてはならない場面を想像してみてください。担当者は、出来る限り魅力的に見えるよう、その投資の収益性や成長性をはじき出してくるでしょう。あなたは出来る限り客観的にその計画を評価しなくてはいけません。気を付けないといけないのは、担当者が提示した収益性や成長率の数字が、すでにアンカーになってしまっていることです。あなたが「普通の」人間であれば、知らぬ間にそのアンカーに引っ張られてしまう可能性が高いのです。

このように、人間の意思決定における様々なミスやバイアス、傾向を学ぶことで、先に述べた2つの目的を達成することを目指します。「ケースを読み込んでがんがんディスカッション」とか、「コーポレートファイナンスの理論を精緻に学ぶ」といったビジネススクールといえば思い浮かぶ典型的な授業ではない、こんな授業も、Whartonでは展開されています。