COURRiER Japon「ウォートンに聞け!」 3倍の倍率を突破して来日!MBA生が求める日本の“教材”とは?

2016年4月からCOURRiER Japonにて連載の「ウォートンに聞け!」最新記事は、日本で開催された海外短期集中コースGlobal Modular Course (GMC) にTA (ティーチング・アシスタント)として参加した在校生のレポートです。米国から海外に渡航して学ぶGMCプログラムの概要や、多種多様なバックグラウンドを持つWharton生が日本に「何を求め、学びに来るのか」を垣間見ることができる、興味深い記事ではないかと思います。ぜひご一読ください!

【COURRiER Japon 連載】ウォートンに聞け!

3倍の倍率を突破して来日!MBA生が求める日本の“教材”とは?

今岡植 1988年シンガポール生まれ。2010年早稲田大学政治経済学部卒業。同年、財務省に入省。大臣官房文書課(法令審査・国会関連)、福岡国税局、国際局国際機構課(G20/G7財務相・中銀総裁会議、IMF担当)での勤務を経て、2015年ウォートンスクール入学。2017年MBA取得予定。

PHOTO: THE WHARTON SCHOOL, COURRiER Japon

2017年3月6~9日、ウォートンのGlobal Modular Course(以下「GMC」)という海外短期集中コースが日本で開かれた。私はこのGMCのティーチング・アシスタントの募集告知を見つけ、面接を経て、ウォートンの学生たちに同行することとなった。参加者が日本について深く学ぶ一助となりたいと思ったことに加え、自分自身にとってもさまざまな発見や学びがあるだろうと思ったからだ。本稿では、GMCの概要と日本での様子について紹介したいと思う。

GMCとは?

  • 学生が海外に出向き、現場感覚に触れながら、コースのコンセプトやビジネスの課題を集中的に学ぶ、ウォートンの看板プログラム。2011年に初めて導入された
  • 対象は、フルタイムMBA学生だけではなく、学部生、EMBA(エグゼクティブMBA)も含む。期間は3~5日程度で、単位も与えられる
  • コンセプトや場所は、学生の関心に応じて毎年決定される
  • 学生は、事前の課題読書を踏まえた来日前のプレトリップペーパー、来日中のグループプレゼンテーション、帰国後のリフレクションペーパー、発言頻度・内容などの参加度で評価される。プレゼンテーションでは、企業訪問の経験や分析を各グループがまとめ、クラスメイトに9~18分で発表するというもの
  • 旅費、滞在費は自己負担

2016~17年に実施されたプログラムは以下の通り。中国、インド、ブラジルといった新興国が中心。先進国については、欧州におけるファイナンスと本プログラムが実施された。

Japan GMCのテーマ

日本ではこれまで、2013、2014、2015年と3回実施されており、主なフォーカスは、自動車産業等に代表される「オペレーションの効率性」「モノづくり、サプライチェーンの力」についてであった。

今回のJapan GMCのテーマは「日本の競争力維持:日本のアプローチ、進展、今後の課題」である。米国企業は生産機能を“単なるコスト”と考え、次々に新興国に移転したことにより、モノづくりのコアとなる競争力を失った。一方、米国に比べて日本は、マザー工場としての国内工場を守り、モノづくりの競争力を維持してきた。今回のGMCでは、その観点から学びが多そうな日本企業を訪問することとなった。これに加え、広く「日本の競争力」を捉える上では、「オペレーション」や「モノづくり」以外の側面も見る必要があるとの認識から、テクノロジーや基礎研究を軸とした企業も訪問先に含めることとなった。

今回訪問した企業は順に、LINE、ミクシィ、ヤマトホールディングス、日産自動車、ユーグレナ、ソフトバンク、タマチ工業、浜野製作所である。

日本で就職したい参加者も!

参加者は、エッセイによって90人弱から選抜された35人。EMBAに所属する学生が9割近くを占めた。彼らは、平日にフルタイムで仕事をしながら、隔週の土日にフィラデルフィアまたはサンフランシスコキャンパスで講義を受けている。平均年齢は35歳と、フルタイムMBAの学生より若干高く、特定の問題意識を持って学んでいる学生が多いことが特徴である。

参加者の多くは日本に対して強い関心を持っており、なかには真剣に日本での就職口を探している学生もいた。一方、日本はおろかアジアに来るのも初めてという人もおり、そのうちの一人は「日本に来ること自体が、自分にとって大きなチャレンジだった」と語った。

事前読書課題は、マイケル・ポーター・竹内弘高共著『日本の競争戦略』(2000年)だった。本著では、日本企業の負の特徴として、「効率性への過度な注力」「利益よりも市場シェアを重視」「ストラテジーの欠如(不要な分野までビジネスを拡大する)」などが挙げられている。本研究は、1990年代の日本企業を対象としていることから、参加者への事前レポートでは、当該議論が現在においてどの程度妥当あるいは不当か、いまの日本企業に照らし合わせて論じることが求められた。

企業訪問での学び

今回のGMC担当であるマクダフィ教授は、自動車産業に造詣が深く、これまで何度も訪日している。教授の哲学は“現地現物”。ある参加者からは、「現地現物を過小評価していた。何度も日本に来たことがあるが、今回はこれまでとはまったく違うレベルで日本や日本企業を理解することができた」という声が聞かれた。

訪問先企業は、下記の2つに分類できる。
1) オペレーションに強みのある伝統的な企業
2) テクノロジーや研究開発を軸とした新しい企業

それぞれに関心を持っている人がちょうど半数ずつおり、今回のテーマ設定が適切なものであったことが再確認された。また、ある参加者からは「どの企業もとても正直に現状を語ってくれ、かつ弱みも率直に認めていたことには正直驚いた」とのコメントもあった。

1)に該当する日産自動車、ヤマトホールディングス、タマチ工業、浜野製作所への訪問では、日本企業のオペレーションについて、実際の改善プロセスや、その背後の哲学について、1つずつ丁寧に質問し確認する参加者の姿が印象的であった。MBAの必修科目でも、日本企業のオペレーションについては長い時間を割いて学んでいるからであろう。また、「カイゼン」とは現場レベルで主体的・能動的に小さなイノベーションを積み重ねることを指すが、参加者はそのメカニズムやダイナミズムを“現地現物”で確認できたことに感嘆していた。

2)の訪問先であるLINE、ミクシィ、ユーグレナ、ソフトバンクでは、主にテクノロジーにバックグラウンドを持った学生らが、企業担当者に数多く質問する姿が目立った。事前準備のお陰で、こんな本質的な質問が相次いだ。

  • 「他のSNSと比較した際の“LINEならでは”のサービスの価値はなにか」
  • 「ミクシィが、ゲームを軸に据えたビジネスモデルに大胆なシフトをした契機・経緯を教えてほしい」
  • 「ユーグレナの核となるミドリムシの大量培養の技術を得た後、実際にビジネスを確立するにはどのような困難があったか」
  • 「ロボット市場には多くのプレーヤーが参入してきているが、ペッパーはどのようなビジネスモデルで、どの市場で勝負していく算段か」

また最終日には、ウォートン卒業生を中心とした日本を代表するビジネスリーダーや政府職員によるパネルセッションがおこなわれた。日本のスタートアップシーン・産業振興における課題、オリンピックに向けた官民の連携などについて、活発な議論が交わされた。

たとえば、経済産業省職員からクールジャパンの取り組みが紹介されると、「政府の支援は必要。政府が日本企業の競争力強化をサポートすべき」との反応があった。一方、「これまでのように政府がイニシアティブを取ることには限界があり、政府は規制緩和に注力すべき」などの意見も出た。

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