日本人在校生による Summer Coffee Chat

受験生の皆さま、こんにちは。

この度、下記の日程で、日本人在校生によるCoffee Chatを、東京にて開催することになりましたので、ご案内させていただきます。

WhartonのAcademic Program、 Leadership Experience、Student Life、Cultureなど、在校生ならではの最新情報を、ざっくばらんにお伝えできる貴重な機会になりますので、受験生の皆さまのご参加をお待ちしております。

【日時】

・2018年5月20日(日)午前11:00〜午後12:00(日本時間)
※Lauder向けとなっておりますが、Lauder以外に関心のある方の参加も可能です。

・2018年5月21日(月)午後7:00〜午後8:00(日本時間)

・2018年8月12日(日)午後12:30〜午後1:30(日本時間)

・2018年8月18日(土)午後3:00〜午後4:00(日本時間)

【場所】

東京(詳細につきましては、参加される方に個別にご連絡差し上げます)

【申込】

下記のWhartonのWebsiteより、該当する日程を選択のうえ、お申し込みください。

https://mba.wharton.upenn.edu/attend-coffee-chat/

 

受験生の皆さまとお会いできることを、在校生一同、楽しみにしております!

 

※本Coffee Chatは、選考とは関係ございません。また、当日のお茶代等は、各自でご負担いただくことになりますので、ご了承ください。

VC投資を受けるべきか?

HHです。私はSemester in San Franciscoに参加して、ベイエリアで活躍する大勢のWharton卒の起業家やVC投資家に会ったのですが、彼らの多くがおすすめの授業として挙げていたのが、Robert J BorgheseのLGST 813: Legal Aspects of EntrepreneurshipとDavid WesselsのFNCE 750: Venture Capital and the Finance of Innovationでした。ビジネスモデルやプロダクトデザインなどは、起業後にピボットして修正していくことができますが、ファイナンシングやリーガル関連の契約書は後から変更することができないため、取返しのつかない失敗に繋がる危険性があるからです。

Facebook創業者で30%の持ち分を持っていたEduardo Saverinが、Mark Zuckerbergと投資家から追い出され、0.03%の持ち分まで希薄化されてしまった映画のワンシーンが、「ファイナンスや法務の知識がない」ことの怖さを如実に物語っています。

 

どんなビジネスフォームで起業するか?

一般的に、「起業する」、というと創業者が無限責任を負うことを回避するために株式会社 (C Corporation) を設立するというイメージがあります。ところが、授業では、「株式会社は利益に対する法人税と、利益の分配に対する所得税が二重課税されるので、C-Corp設立は”特別な理由”がない限り後回しにするべき」と習います。実は、前述のFacebookも創業当初はLLC (Limited Liability Company) でした。

また、個人事業主 (Sole Proprietorship)や、パートナーシップ (Partnership)のように無限責任を負うビジネス形態でも、ソフトウェア会社が商品販売額を損害賠償のキャップとしているように契約によって責任を限定したり、各種保険を活用することでビジネスリスクを第三者に転嫁したりする方法があります。こういう話を、実際にスタートアップやPE/VCファンドをクライアントに持つ現役弁護士のBorghese氏が、豊富な実体験を交えて説明してくれます。” Tenants By Entirety”という配偶者を使った資産管理方法や、配偶者も信用できない人向けにデラウェア州の特殊な信託口座を使って個人財産を倒産隔離して守る方法など、法律のループホールを突くようなテクニックにも詳しくなれます。

この辺りの知識は、パートナーシップ制で運営されるコンサルティング会社や、GP/LPストラクチャーを使った投資ファンドで働く人にとっても有用な知識です。また、人生最大の不確実要因である「結婚」についても貴重なリーガルインサイトを得ることができます。

 

「株式会社」を設立すべき時

起業において、どうしても株式会社を設立しないといけないケース、というのは突き詰めていくと、「VC投資を受け入れる時」ということになります。Facebookが事業運営主体をLLCからデラウェアC-Corpに移管したのも、VC投資を受け入れるためでした。タックスパススルーエンティティであるPE/VCファンドにとって、投資先からの利益の分配はUBTI(Unrelated Business Tax Income)になって課税されてしまうためです。

Corporationを設立したので、無限責任から解放されると思ったら大間違いで、”Fiduciary Duty”をステークホルダーに対して負うことに変わりありません。このFiduciary Dutyという概念は、過去の判例に基づいて構築された英米法上の概念で、制定法を中心とする大陸法を採用している日本人には理解が難しいのですが、LGST813を受講し、様々なケースを読んだことで理解が深まりました。ちなみに、Facebookを追い出されたEduardoは、MarkのFiduciary Duty違反を突いて裁判を起こし、一定の株式を取り返しています。

 

創業者とVCのリスク・リターンの違い

創業者からすると、自らファンド資金を出資して同じボートに乗ってくれるVC投資家は救世主のような存在です。しかし、FNCE750を受講して、VCファイナンスにファイナンス理論のレンズを当ててみると、創業者とVCではリスク・リターンプロファイルが全く異なるということが見えてきます。

まず、一社に注力するしかないスタートアップ創業者と、分散投資が可能なVCでは個別案件に対するリスクが異なります。Facebookに最初に投資したAccel Partnersは$13Mを5年で250倍にしているのですが、ここまでは極端にしても、一般的なVCは、細かい成功を積み上げていくことよりも、投資リターンが10倍以上になる可能性のあるスタートアップを発見し、育てることに注力し、その可能性が無くなったポートフォリオ企業には注力しない、という投資方針を持っています。起業家コミュニティでの評判が、VCの中長期的な成功にとって大切なので、VCが急に投資先サポートをやめるということはありませんが、ベンチャーキャピタリストが使える時間は限られているということを覚えておく必要があります。

また、創業者が持っている普通株と、VC投資家が持っている優先株も同じ価値ではありません。例えば、VCが出資する優先株には、投資のダウンサイドを守るため、Liquidation Preferenceというオプション条項が入ることが慣習になっています。オプションの価値をブラック・ショールズモデルで計算してみると、VCから高バリュエーションを勝ち取っても、オプション条項で譲歩してしまうと損することさえあるということがわかるようになります。私がシリコンバレーのVCでインターンしていた時も、Liquidation Preference等の優先株メカニズムが原因で、創業者と某VCのExitに対する意見に相違が発生しているというケースを目にしました。

従って、VC投資を受け入れる時は、Bootstrapでは実現できない急成長をVC投資家と一緒に目指すという覚悟が必要です。

 

あなたが、創業株をもらったら

MBA卒業直後のように、通常、あまり現金がない状況で、スタートアップの創業に参画し、Vesting付きの創業メンバー株を取得した場合に、絶対にした方がいいのが、83(b) electionです。詳細の説明は省きますが、これを忘れると、現金がないのに多額の納税義務が発生する危険があるので気を付けてください。

最後になりますが、実は、Wharton卒業生のほぼ全員が、人生のどこかで起業に参画することになると言われています。個人事業としてコンサルティング・プロジェクトを受託したり、プライベートの資産管理会社を作って投資をしたり、NPOを立ち上げて理事になったりすることも、広義の「起業」で、これからの時代、複数の仕事をしていくことが当たり前だからです。

旬なビジネスモデルやテクノロジーは日々変わり、マーケティングの方法論にも流行り廃りがありますが、「起業」に関わる法体系やファイナンス体系は、長い歴史の中で形成されていて、急激に変わるものではありません。一度身に着ければ、ずっと使える知識なので、是非受講してみてください。

良いPE投資とは何か?

HHです。Wharton生がアクセスできるPE/VCリソースについて、2010年にYNさんがまとめて下さった記事が今も参考になるのですが、授業に関して2回に分けてアップデートしたいと思います。まず、今回はPEから。

 

WHARTON生がアクセスできる豊富なPEVCリソース

http://www.wharton-japan.net/archives/66

 

日本のPEファンド業界は、歴史が浅く、業務経験者も限られているので、投資銀行のバンカー、コンサルタント、MBA留学生などを幅広く採用ターゲットとしています。

一方、アメリカのPEファンド業界は、日本よりもずっと成熟しており、新卒アナリスト入社組や、投資銀行やコンサルティング会社で2年働き、バイサイドで2年働いてきた”2+2”組がいるため、MBA採用でPE未経験者を採用すること自体が稀です。トップPEファンドは、MBA採用のターゲットをHBS、GSB、Whartonの3校に絞っており、Wharton進学を決めた理由が「PE業界でのネットワークの強さ」という学生も少なくありません。

ところが、PEの実務に直接役立つWhartonの授業は何か?と言われると、即答できないという状況が近年まで続いていました。もちろん、PEはMBAで習う戦略、人事、マーケティング、オペレーション、マクロ経済、会計、税務、会社法、交渉術といった幅広い内容を卒業してすぐに使うことになるので、全ての授業が役に立つと言えます。ただ、扱う必要の知識が多岐に渡りすぎている故に、1つの分野を深掘りしてきた教授が包括的に教えるのは無理があったのかもしれません。

この状況を打破したのが、WhartonのPEプログラムヘッドのBilge Yilmaz教授です。彼は、FNCE884 – ADVANCED TOPICS IN PEという授業を2015年に開講し、実際にPE業界で働いているWharton卒業生の力を借りることにしました。

まず教材は、Carlyleが実際の投資案件で使っていた本物のデータです。これには、売り手側が投資銀行に作らせて買い手候補側に開示したCIM (Confidential Information Memorandum)や、Bain & Companyが作成したビジネスDD資料、会社側が作成した分析ファイル、各種マーケットリサーチデータなどが含まれます。これを基に、5-6人の学生チームでLBOモデルを作成し、投資委員会向けのプレゼン資料を作成します。その後、実際にLBOローン組成を提案した4つの銀行のタームが配られます。これを学生は、グリッドに整理して、どの銀行からデッド調達を行うべきかを決定します。最後に、各チームは売り手チームと買い手チームに分かれて、SPA (株式売買契約書) の交渉を行います。SPA交渉の前には、Kirkland & Ellisのパートナーが教室に来て、LBOディールで交渉ポイントになりがちなポイントについてのブリーフィングがあり、SPA交渉の後には、Carlyleで案件を担当したパートナーが教室に来て、ディールの肝を説明してくれます(ちなみに、扱うディールは来年からアップデートされるようです)。

さらに昨年から、David BardというWharton Undergrad & MBA卒業生が講師を務めることになりました。彼は、Bain Capital出身で、現在はAmerican SecuritiesというNYのPEファンドでマネージャーをしています。彼が仕事後にフィラデルフィアに来る必要があるので、開講時間が月曜日の午後6時から9時と遅めなのですが、PE出身・志望の学生が殺到して、立ち見の聴講者が出るほどの人気授業になっています。

特に印象に残ったのは、「PE投資にとって、良い投資テーマ (investment thesis)とは何か?」ということについて丸々6時間かけて徹底的に議論したことです。”対象会社がロールアップM&Aをすることによる成長可能性”というのは、投資テーマになり得るのか?といった論点に関し、「業界再編に経済合理性があり、対象会社も買収候補のリストを作成済みで、過去にもM&Aを実行していて、PMIにも成功している実績があるのでなければ、投資テーマとは言えないだろう」と結論をまとめていたのですが、これは実際の投資案件で修羅場をくぐってきた実務家でないと言えない発言だと思います。私も、”NPS (Net Promoter Score)が高い、というのは投資テーマになり得るのか?”という積年の疑問をぶつけてみたのですが、「NPSが高いというだけでは投資テーマとして弱いのではないかと思い始めている。例えば、ロイヤルカスタマーが年平均5足も購入する高NPSの靴ブランドがあったとして、彼らがブランドを熱狂的に支持しながらも翌年には3足しか購入しなくなり、売上成長が止まるといったことは起こり得る」という指摘は目から鱗でした。

投資テーマとは反対のリスク要因に関して、”特定の顧客への依存度が高い”といった発言に対しては、「顧客別の収益性を見るまでは判断できない。仮に、売上の50%を占める顧客への利益率が0%だった場合、この顧客を切った方がいいということもあり得る」と切り返されていました。このように、初期仮説を一旦留保し、批判的に見直すことで、異なるアングルの視点が得られるというのはバリュー投資の醍醐味だと思います。

投資テーマの仮説を検証していく作業についても、いかにチームの若手やコンサルタントのリソースを適切に配分するべきかという方法論を学びます。投資委員会でのプレゼンのストーリーラインをワークプランにしてチームに展開し、枝葉末節の論点を削るという働き方のtipsを、「コンサルタントを雇う場合であっても、エキスパートインタビューのインタビューガイドと、カスタマーアンケートの質問票は事前に自分で責任をもってチェックしろ」といったレベル感で指導できるのは実務家ならではです。「ジュニア時代に上司にされて嫌だったことは俺たちの代で終わらせようぜ!」といった熱い提言もあって心に響きました。

また、PEファンド、メザニンファンド、LevFin出身者も多数授業を受講しているので、「Apollo (ディストレス債権への投資で有名なPEファンド)だったら、このリスクはEntry Priceに織り込んで取りに行く」、「Silverlake (Techに強みを持つPEファンド) だったら、この場合はこういうTechnology DDをするはず」、「JP Morganはこのローンタームにはこだわる」といった同級生の貴重なコメントを聞くことができたのも有意義でした。

教室の外では実際のデータを使ったライブ・ディールを経験でき、教室の中でも実際の投資委員会さながらの議論を経験できる貴重な授業なので、PE出身者・志望者にとどまらず、幅広い方にお勧めしたいです。