COURRiER Japon「ウォートンに聞け!」 3倍の倍率を突破して来日!MBA生が求める日本の“教材”とは?

2016年4月からCOURRiER Japonにて連載の「ウォートンに聞け!」最新記事は、日本で開催された海外短期集中コースGlobal Modular Course (GMC) にTA (ティーチング・アシスタント)として参加した在校生のレポートです。米国から海外に渡航して学ぶGMCプログラムの概要や、多種多様なバックグラウンドを持つWharton生が日本に「何を求め、学びに来るのか」を垣間見ることができる、興味深い記事ではないかと思います。ぜひご一読ください!

【COURRiER Japon 連載】ウォートンに聞け!

3倍の倍率を突破して来日!MBA生が求める日本の“教材”とは?

今岡植 1988年シンガポール生まれ。2010年早稲田大学政治経済学部卒業。同年、財務省に入省。大臣官房文書課(法令審査・国会関連)、福岡国税局、国際局国際機構課(G20/G7財務相・中銀総裁会議、IMF担当)での勤務を経て、2015年ウォートンスクール入学。2017年MBA取得予定。

PHOTO: THE WHARTON SCHOOL, COURRiER Japon

2017年3月6~9日、ウォートンのGlobal Modular Course(以下「GMC」)という海外短期集中コースが日本で開かれた。私はこのGMCのティーチング・アシスタントの募集告知を見つけ、面接を経て、ウォートンの学生たちに同行することとなった。参加者が日本について深く学ぶ一助となりたいと思ったことに加え、自分自身にとってもさまざまな発見や学びがあるだろうと思ったからだ。本稿では、GMCの概要と日本での様子について紹介したいと思う。

GMCとは?

  • 学生が海外に出向き、現場感覚に触れながら、コースのコンセプトやビジネスの課題を集中的に学ぶ、ウォートンの看板プログラム。2011年に初めて導入された
  • 対象は、フルタイムMBA学生だけではなく、学部生、EMBA(エグゼクティブMBA)も含む。期間は3~5日程度で、単位も与えられる
  • コンセプトや場所は、学生の関心に応じて毎年決定される
  • 学生は、事前の課題読書を踏まえた来日前のプレトリップペーパー、来日中のグループプレゼンテーション、帰国後のリフレクションペーパー、発言頻度・内容などの参加度で評価される。プレゼンテーションでは、企業訪問の経験や分析を各グループがまとめ、クラスメイトに9~18分で発表するというもの
  • 旅費、滞在費は自己負担

2016~17年に実施されたプログラムは以下の通り。中国、インド、ブラジルといった新興国が中心。先進国については、欧州におけるファイナンスと本プログラムが実施された。

Japan GMCのテーマ

日本ではこれまで、2013、2014、2015年と3回実施されており、主なフォーカスは、自動車産業等に代表される「オペレーションの効率性」「モノづくり、サプライチェーンの力」についてであった。

今回のJapan GMCのテーマは「日本の競争力維持:日本のアプローチ、進展、今後の課題」である。米国企業は生産機能を“単なるコスト”と考え、次々に新興国に移転したことにより、モノづくりのコアとなる競争力を失った。一方、米国に比べて日本は、マザー工場としての国内工場を守り、モノづくりの競争力を維持してきた。今回のGMCでは、その観点から学びが多そうな日本企業を訪問することとなった。これに加え、広く「日本の競争力」を捉える上では、「オペレーション」や「モノづくり」以外の側面も見る必要があるとの認識から、テクノロジーや基礎研究を軸とした企業も訪問先に含めることとなった。

今回訪問した企業は順に、LINE、ミクシィ、ヤマトホールディングス、日産自動車、ユーグレナ、ソフトバンク、タマチ工業、浜野製作所である。

日本で就職したい参加者も!

参加者は、エッセイによって90人弱から選抜された35人。EMBAに所属する学生が9割近くを占めた。彼らは、平日にフルタイムで仕事をしながら、隔週の土日にフィラデルフィアまたはサンフランシスコキャンパスで講義を受けている。平均年齢は35歳と、フルタイムMBAの学生より若干高く、特定の問題意識を持って学んでいる学生が多いことが特徴である。

参加者の多くは日本に対して強い関心を持っており、なかには真剣に日本での就職口を探している学生もいた。一方、日本はおろかアジアに来るのも初めてという人もおり、そのうちの一人は「日本に来ること自体が、自分にとって大きなチャレンジだった」と語った。

事前読書課題は、マイケル・ポーター・竹内弘高共著『日本の競争戦略』(2000年)だった。本著では、日本企業の負の特徴として、「効率性への過度な注力」「利益よりも市場シェアを重視」「ストラテジーの欠如(不要な分野までビジネスを拡大する)」などが挙げられている。本研究は、1990年代の日本企業を対象としていることから、参加者への事前レポートでは、当該議論が現在においてどの程度妥当あるいは不当か、いまの日本企業に照らし合わせて論じることが求められた。

企業訪問での学び

今回のGMC担当であるマクダフィ教授は、自動車産業に造詣が深く、これまで何度も訪日している。教授の哲学は“現地現物”。ある参加者からは、「現地現物を過小評価していた。何度も日本に来たことがあるが、今回はこれまでとはまったく違うレベルで日本や日本企業を理解することができた」という声が聞かれた。

訪問先企業は、下記の2つに分類できる。
1) オペレーションに強みのある伝統的な企業
2) テクノロジーや研究開発を軸とした新しい企業

それぞれに関心を持っている人がちょうど半数ずつおり、今回のテーマ設定が適切なものであったことが再確認された。また、ある参加者からは「どの企業もとても正直に現状を語ってくれ、かつ弱みも率直に認めていたことには正直驚いた」とのコメントもあった。

1)に該当する日産自動車、ヤマトホールディングス、タマチ工業、浜野製作所への訪問では、日本企業のオペレーションについて、実際の改善プロセスや、その背後の哲学について、1つずつ丁寧に質問し確認する参加者の姿が印象的であった。MBAの必修科目でも、日本企業のオペレーションについては長い時間を割いて学んでいるからであろう。また、「カイゼン」とは現場レベルで主体的・能動的に小さなイノベーションを積み重ねることを指すが、参加者はそのメカニズムやダイナミズムを“現地現物”で確認できたことに感嘆していた。

2)の訪問先であるLINE、ミクシィ、ユーグレナ、ソフトバンクでは、主にテクノロジーにバックグラウンドを持った学生らが、企業担当者に数多く質問する姿が目立った。事前準備のお陰で、こんな本質的な質問が相次いだ。

  • 「他のSNSと比較した際の“LINEならでは”のサービスの価値はなにか」
  • 「ミクシィが、ゲームを軸に据えたビジネスモデルに大胆なシフトをした契機・経緯を教えてほしい」
  • 「ユーグレナの核となるミドリムシの大量培養の技術を得た後、実際にビジネスを確立するにはどのような困難があったか」
  • 「ロボット市場には多くのプレーヤーが参入してきているが、ペッパーはどのようなビジネスモデルで、どの市場で勝負していく算段か」

また最終日には、ウォートン卒業生を中心とした日本を代表するビジネスリーダーや政府職員によるパネルセッションがおこなわれた。日本のスタートアップシーン・産業振興における課題、オリンピックに向けた官民の連携などについて、活発な議論が交わされた。

たとえば、経済産業省職員からクールジャパンの取り組みが紹介されると、「政府の支援は必要。政府が日本企業の競争力強化をサポートすべき」との反応があった。一方、「これまでのように政府がイニシアティブを取ることには限界があり、政府は規制緩和に注力すべき」などの意見も出た。

******************************************************************

COURRiER Japon の連載記事につきましては、新着がございましたら「関連記事 / リンク」のページに随時更新をさせて頂きます。過去の特集記事についても一覧がございますので、あわせてご参考頂けますと幸いです。

COURRiER Japon「ウォートンに聞け!」MBAでヘルスケアマネジメントが学べるのを知っていますか?

2016年4月からCOURRiER Japonにて連載の「ウォートンに聞け!」最新記事は、ヘルスケアマネジメント専攻についての在校生レポートです。記事内にもある通り、Whartonのヘルスケアマネジメント(通称HCM)専攻は全米トップクラスの評価を得ています。現在2年生の在校生が、HCMとしてWharton MBAに入学するためのプロセス、コミュニティの特徴、またそこでの学びについて紹介させていただきましたので、ぜひご一読ください!

【COURRiER Japon 連載】ウォートンに聞け!

MBAで「ヘルスケアマネジメント」が学べるのを知っていますか?

松本恵理子 2007年慶応義塾大学商学部卒業。同年、三菱商事株式会社入社。ヘルスケア部門にて、病院の建替えプロジェクト(病院プライベート・ファイナンス・イニチシアチブ)を担当。その後、子会社であるエム・シー・ヘルスケアに出向し、診療材料・医薬品の共同購買及びサプライチェーンシステムの営業とビジネス開発に従事。現在、ウォートンのヘルスケアマネジメント学部在学中。2017年5月MBA取得予定。

PHOTO: THE WHARTON SCHOOL, COURRiER Japon

実はウォートンのMBAには、ヘルスケアマネジメント(通称HCM)という専門学部が存在する。1971年から45年以上も続いているプログラムだ。留学生が約30%を占めるウォートンだが、HCMの留学生比率は10%と極端に少ない。そんななか、総合商社のヘルスケア部門を経て留学した松本恵理子さんが、挑戦の日々をレポートする。

私も受験をするまでHCMの存在を知らなかったのですが、ここ米国では、常識的に「ヘルスケア業界に強いウォートン!」としてかなりのプレゼンスを示しており、業界に多くの優秀なビジネスパーソンを輩出しています。たとえば、ジョンソン・エンド・ジョンソンのアレックス・ゴースキーCEOもその1人です。私も留学してすぐに、この強固なネットワークを目の当たりにしました。

そもそも、この特殊なHCMプログラムは毎年70人前後の枠があり、ウォートンに出願する時点で、HCM専攻希望であることを宣言しなければなりません。選考も通常のMBAよりワンステップ多く、HCMプログラムディレクターであるジューン・キニー教授との面接を突破する必要があります。

合格のポイントは、「既存のHCMネットワークをさらに広げて、新たな価値を吹き込めるか」です。クラスメートの持つ経歴と強みにはそれぞれに個性があり、まさに「ヘルスケアのるつぼ」を実感します。職務経験も、プロバイダー(医療機関)、ペイヤー(保険会社)、臨床経験のある医師、ヘルスケア関連のコンサル、投資銀行、プライベートエクイティ・ベンチャーキャピタル、バイオテック、製薬、医療デバイス、スタートアップ、とバラエティに富んでいます。ペンシルバニア大学医学部在学中のMD・MBA生も複数人います。

「私に理解を示す必要のない米国人」との議論

ウォートンでは、クラスの単位を「コホート」と呼びますが、このコホートにそれぞれ6名ずつMCH生が配置されます。そして、この6名で1つのラーニングチームを構成します。HCM関連の授業はもちろんのこと、統計学やマーケティングなど、MBAのコア科目における課題もこのラーニングチームで取り組むことになっているため、実質1年生の間は、四六時中、HCM生と一緒に過ごすことになります。

私のラーニングチームは、ヘルスケアコンサル、保険会社、PE、スタートアップ経験者、そして私という構成で、私を除く全員が米国人。ここで特筆すべきは、HCMにおける留学生の少なさです。ダイバーシティに富むウォートン全体では、30%強の留学生がいます。しかしHCMではわずか10%。中国人、インド人、メキシコ人、そして日本人は私のみです。

HCMの歴史上も、日本からの純粋な留学生は4人しかいません。米国のビジネススクールなので、やはり米国のヘルスケアが学びの中心になります。また、「HCMで有名なウォートンで、何がなんでも学びたい!」という意思で入学している学生がほとんどなので、クラスメートの米国人率が上がるのは当然のことでもあります。

思い返せば、留学前の商社勤務時は、米国人とだけ膝を突き合わせて議論する機会は少なく、あったとしても、我々のビジネスに「理解と興味のある米国人」との接触でした。しかし、「利害関係もなく、私に理解を示す必要もない米国人」と共に課題やプロジェクトを推進していくことは、未知体験。また、学びのベースは米国のヘルスケア制度ですから、いままでどっぷり米国の医療に浸かってきた米国人クラスメートと私とでは、知識とセンスに大きなギャップがあり、それをハンディキャップと感じることも多くありました。実際、時間をかけて考えたアイディアがものの見事に一蹴されたり、「米国の常識とは違うから…」と反論にあったりもしました。

著名病院からもコンサル依頼!

ここで、HCMの名物授業を2つ紹介します。

1つ目は、HCMの基礎科目の位置づけである、ロートン・バーンズ教授による、「ヘルスケアサービスシステム」です。HCMには“アイロン・トライアングルからトリプル・エイムへ”という合言葉があります。アイロン・トライアングルとは、アクセス、質、医療費の3つを頂点とする三角形のことで、どれかを実現するためにはどれかが犠牲にならなければならない、という考え方。一方、トリプル・エイムとは、質、健康向上、医療費の3つを頂点とする三角形は、どれも犠牲にすることなくバランスを保ち得る、という発想です。この考え方へのシフトを、徹底的に頭に叩き込まれるのです。これはまさに、昨今の業界トレンドである「バリューベースヘルスケア(Value-Based Care:ボリュームではなく、費用対効果の高い、価値創出に基づく医療)」に関連しており、HCMでの学びの軸になっていると感じます。

この授業では、前出のプロバイダー、ペイヤー、そしてプロデューサー(製薬メーカーやデバイス企業など)の各立場からヘルスケア業界を俯瞰することも目的としています。ゲストスピーカーたちが毎回テーマに沿った講義をしてくれるのですが、彼らが豪華かつテーマがタイムリー。とくに、2015年に話題になったノバルティスとグラクソ・スミスクラインの事業移管を担当したインベストメントバンカーの華麗な講義は、学生の大きな注目を集めていました。

2つ目の名物授業は、「フィールド・アプリケーション・プロジェクト(通称FAP)」で、6人がチームを組み、医療機関、ヘルスケア関連企業/スタートアップのコンサルティングをするプロジェクトです。全部で12チームしか組んでいないのに、米国内外から届いたコンサル依頼は50以上。ここでもHCMのネットワークの幅広さに驚かされました。

私のチームが選んだプロジェクトは、ロサンゼルスの著名病院であるシダーズ・サイナイ病院の、外来患者の健康へのエンゲージメントを促進させるというもの。病院側もこのプロジェクトには真剣で、毎週の電話会議に加え、チームミーティングも頻繁に実施する必要がありました。

しかし、仲間と切磋琢磨して、各人が自分の強みを発揮しながら1つのものを創りあげるプロセスは、目まぐるしくも有意義で、純粋に楽しい時間でした。とくに、私自身の飛び込み営業マインドを活かして、最終的に病院から最も感謝される情報をとってきたことがプロジェクトの突破口となりました。米国医療のフィールドという、自分がアウェーな環境でも存在感を示せたことが、自信にも繋がった貴重な経験となりました。

最新のトレンドに触れられる

HCMではさらに、ヘルスケアクラブの活動も盛んです。毎年2月にウォートンで開催されるヘルスケアカンファレンスは全米のビジネススクールが開催する最も大きなもので、HCM卒業生も集結するネットワーキングイベントになっています。2017年のカンファレンスのテーマは、「ブレーキング・バウンダリーズ(境界を壊す)」でした。「変化の激しいヘルスケア市場で、良質な競争とコラボレーションを実現していこう」というメッセージが詰まったカンファレンスとなりました。

ほかにも、トレンドの1つでもあるデジタルヘルスケアに着目したデジタルヘルスクラブでは、先日、同分野のスタートアップ企業を訪問するトレック(研修旅行)に参加しました。メンタルヘルス患者とコーチングスタッフをマッチングする「Lantern(ランタン)」やメディケイド(低所得者・身体障がい者を対象とした米国公的医療保険制度の一つ)に着目したデータ管理プラットフォームを構築する「Nuna(ヌナ)」など、次の時代をリードするスタートアップのマインドとスピード感に触れることができました。

夏期のインターンシップ探しや就職活動も、ウォートンの一般のキャリアアドバイスの他、HCMからの手厚いサポートが受けられる仕組みになっています。私は2016年夏、大型大学病院の1つであるアラバマ大学バーミンハムのヘルスシステムの管理部門でインターンをしました。携わったのは、外来の診察室利用率を向上させるための方策や、米国医療のキーワードでもある「ポピュレーションヘルス(グルーピングした患者集団に対する医療介入)」の取り組みへの提言など、コンサルティング要素の詰まったプロジェクトでした。米国の大型病院は病院経営を明確に「ビジネス」と捉え、生き残りと威信をかけています。常に医療環境の変化を正確に捉え、そのビジネスを進化させようという努力に余念がないところが印象的でした。

HCMで学ぶ中で、「オバマケア」というビックウェーブを受けたヘルスケア業界全体の試行錯誤と、変化を遂げつつあるダイナミズムをひしひしと感じます。今後、トランプ大統領による医療政策へも対応していかねばなりませんが、根底にある「バリューベースヘルスケア」の流れに乗って、一歩ずつ地に足をつけて前進している印象を受けます。トレンドも常時、微妙な変化があり、現在は「ホームヘルス」「メンタルヘルス」「外来シフト化と利便性向上」に着目したビジネスが非常に増加しているようです。日本も、医療制度が異なるとはいえ、こうした米国のビジネスから学べるところはたくさんあると思います。

HCMでは授業内外で、圧倒されるほどに多くの良質な機会が与えられます。その上、70人のクラスメートの結束が非常に強く、彼らの多様な経験と強みが有機的に作用し、深く幅広い学びを無限大に生み出しています。HCMは私にとって、そんなパワーを感じる場所です。

******************************************************************

COURRiER Japon の連載記事につきましては、新着がございましたら「関連記事 / リンク」のページに随時更新をさせて頂きます。過去の特集記事についても一覧がございますので、あわせてご参考頂けますと幸いです。

豊富な起業家育成プログラム(Y-Prize Competitionに参加して)

初めまして、1st yearのRNとMYです。私たちはアントレプレナーシップ分野の科目や課外活動に注力しており、今回は、起業に向けてどのような機会がWhartonで得られるのかご紹介したいと思います。Whartonはファイナンスの学校というイメージが広くありますが、近年特に起業したい学生が増えており、学校側も起業家育成のための機会を幅広く提供しています。大きく分けると以下の3つのタイプがあります。

  • 授業:その名もずばりEntrepreneurshipという授業や、Innovation、Communication Challenges for Entrepreneurs、Healthcare Entrepreneurship等、様々な授業があり、多くの場合はクラス内で組成したチームメートと新しいビジネスモデルを考えてプレゼンに纏めプレゼンするという形式です。これらの授業をきっかけにして、さらに以下のプログラムに応募していくというチームも少なくないです。
  • ビジネスコンテスト:ビジネスアイディアを競うコンテストも非常に盛んです。ビジネス全般なんでもあり(Wharton Start-up Challenge)というコンテストだけでなく、教育系(Milken Business Competition)・工学系(Y-Prize Business Competition)・携帯アプリ系などジャンルごとに分かれているものもあり、専門性と創造性が競われています。優勝すれば賞金などがもらえ、起業準備にはずみがつきます。
  • 起業家支援プログラム:ビジネスアイディアをまとめたプレゼンが評価されれば、資金援助、ワークプレイス、弁護士・会計士からの起業支援、教授や起業家からのアドバイス等を包括的に受けることができます。Whartonやペン大が主催しているものだけでなく、VCやNPOなどさまざまな団体が提供しており、起業に向けた登竜門です。

続いて、私たちが参加したプログラムの中から、Y-Prize Business Competitionというビジネスコンテストについて詳しくご紹介したいと思います。

Y-PrizeはMack Institute for Innovation ManagementというUPennのイノベーションセンターが主催している学部横断型のビジネスコンテストです。UPenn Engineeringが保有する特許技術を使って、商業化に向けたビジネスプランを考え、競い合うというイベントになっています。私たちは幸運にもこのコンテストの予選を突破し、ファイナリストとして決勝ラウンドで教授陣、Venture Capitalist、生徒の前でプレゼンさせていただくという貴重な機会を得ることができました。
https://yprize.upenn.edu/

Y-Prizeの最大の特徴は大学の特許技術を用いる点、また学生が学部横断でチームを組んでコラボレーションする点です。UPennには多くの特許技術が眠っており、中には大変ニッチな技術があります。今回のテーマとなった技術は、ナノレベルの薄さの素材、張力をかけることで透明性が変化するポリマー素材の2つでした。技術的にはとても面白いのですが、これをどのように実用化するのかという点が大変難しく、各チームが頭を使ってアイディアを考えていきます。

またチームについて、このコンテストは学部横断型で、様々な学部から参加者が集います。MBAに限らず、医学部、工学部、デザイン学部など多様なバックグラウンドが一堂に会します。技術・ビジネス両面をカバーできるような強いチームを作ることが、コンテストの結果を決めるといっても過言ではありませんでした。

私たちは上記のポリマー素材を使って、自動車の遮光性を変えるウィンドウガラスを作るというビジネスモデルを提案しました。数ヶ月間かけて、チームメンバーと議論し、顧客・専門家にヒアリングし、教授にアドバイスをもらい、プレゼンを作りなおし、そしてまた議論するというサイクルをまわし続けた結果、幸運にも、予選審査を勝ち抜いて決勝4チームに選出されることができたことは一つの自信になりました。結果的に優勝することはできませんでしたが、私たちはこのコンテストを通じて、大変多くのことを学ぶことができました。

チームとしてのDiversityの重要性を腹の底から理解できた

MBAのマネジメント関連の授業では多様性のあるチームを構成することの重要性を何度も教えられます。一方で私たちはそういった教えを受けても「理屈上ではまぁそうだよね」程度にしか捉えておらず、そのベネフィットについてはいまいちピンと来ていませんでした。

この考え方を変えてくれたのが今回のコンテストでした。私たちMBA生の知識・経験だけではとても予選を勝ち抜けないと考え、積極的に技術系の生徒に声をかけ、工学部の大学院生2名とチームを組むことができました。彼らに本当に助けられました。ある時は技術面で分からない論点を教授とディスカッションし、私たちに分かりやすく咀嚼して教えてくれる。またある時はこの素材の応用可能性について、私たちが考え付かないようなアイディアを提案してくれる、など多くのことを彼らの頭脳から学びました。またビジネスバックグラウンドの私たちは、彼らが苦手とするマーケティングプランの策定や財務予測などを担当し、まさにお互いがお互いを補完する形でプロジェクトを進めることができました。

また何より、互いに各メンバーの専門性を尊重しつつ、干渉することを厭わないチームの雰囲気を作れたことが大変重要だったと思っています。メンバーの専門性が分散した場合、ややもすると論点・タスクが分断され、チームとして一貫したプランを作れなくなります。今回のチームは分からない部分があると積極的に質問し、必要な情報を互いに教え合うことができました。これは一重にチーム全員で優勝したいというゴールを共有でき、モチベーション高く、プロジェクトにコミットできた結果だと思っています。

実際のアントレピッチに触れることができた

決勝ラウンドに進む中で、多くのVCやアルムナイからビジネスプランのアドバイスをいただくことができました。この際に学んだtakeawayがいくつかあります。

  • ターゲットマーケットは”本当に”存在するのか?もし存在する場合、どの程度のマーケットサイズなのか?を証明しなければいけない
  • チームメンバーの専門性や経験が、事業を立ち上げ・運営する上で必要な要件を満たしていることを強調する必要がある (決勝プレゼンで多くのチームがこの点にとても時間をかけており、この観点が特に重要であるように感じました)
  • 顧客が自分のサービスを使っているシーンを鮮明にイメージし、またオーディエンスにそれを共有できるようにしなければならない (「確かに使いそうだよね」という感覚を醸成すべき)

自分たちの立ち位置が見えたと同時に起業に対する考え方が変わった

全く経験したことのない業界・技術について、バックグランドの異なるメンバーとゼロベースでアイディアを考えてビジネスプランに仕上げていくというのは、最初はとてもチャレンジングに聞こえました。ただ実際にやってみると、これまで日本での業務で培ってきたスキルを活かせば、十分結果が出せるということが少しずつわかり、大きな自信になりました。また、日本では「新規ビジネスの考案」というと特別な才能やひらめきが必要というイメージがありますが、アメリカでは誰もが学べる問題解決の一つのスキルで、しっかり基礎を作り人脈を作ることで起業への道が開かれると考えられていることもわかりました。私たちには至らない点が多くあり成長していかなければいけないことが分かりましたが、それと同時にこれから1年半かけてさらに起業に向けてチャレンジしていこうという意欲と自信が出てきたことも大きな収穫でした。

前述したように、Whartonには起業に向けた様々なリソースがありますので、引き続き、積極的に挑戦していきたいと思います!なお、今回のコンテストにて多くの在校生、Wharton Alumniの方にご協力頂いたことに感謝申し上げます。特にWG’93の遠藤さん、EMBAの福田さんには多大なるご協力を頂戴いたしました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。