コロナ禍のMBA生活(アカデミック編)

Class of 2021の者です。私のMBA生活も早いもので2年目に突入しました。コロナウイルス感染拡大の影響で、Wharton Schoolの授業は全てZoomで提供されております。

1年前には想像もしていなかったオンラインでの授業ですが、メリット・デメリットが明確になってきたので、以下に纏めてみようと思います。飽く迄私見です。また、今回は勉強面を軸に記載しております。勉強よりもソーシャルの方が気になるという方もいらっしゃると思いますが、コロナ禍のソーシャル生活については私自身も手探りでして、後日ブログに纏めようと思いますので、そちらにご期待ください。

【メリット】

授業前

  • 隙間時間がほぼ無い。通学時間や、教室間の移動時間、短い休み時間でトイレに行く時間、時間に余裕を持って行動するために発生するバッファー時間。こういったものがオンライン授業だと存在しないので、ギリギリまで課題や予習・復習に取組むことが出来る。勿論授業開始直前まで寝たり食べたりするのも個人の自由。

授業中

  • チャット機能や挙手機能により、質問のハードルが格段に下がった。特にチャットは教室での挙手に比べて精神的ハードルが非常に低い。また、質問したいときでも自分の発言内容を事前にパソコンで打ち込む等することで要領を得た質問をすることが可能
  • 他人の発言が聴き取りやすい。教室だと遠くにいて声が小さいため聴き取りづらい同級生が存在し得るが、オンラインだとそのような現象は見られない。たまに回線が悪い学生がいるが、そのような場合は全員が聴き取りづらいので問題なし
  • 板書が見やすい。上記同様、教室だと見づらいと感じることのある板書も、目の前に表示されるので分かりやすい。また、以前と比較してスライドが充実しているように感じる。(それが真実だとすれば、)授業の流れを追いやすくなっている
  • 調べ物が容易にできる。ちょっと分からない用語や定義が出てきたときに手許ですぐに調べることができるので分からないことを放置して授業後に調べるよりも効率的。

授業後

  • 復習が容易。ほぼ全ての授業が録画されているため、理解が及んでいないと感じる箇所や意識が飛んでいた(そしてそういうことは往々にしてある)と思われる部分は繰り返し視聴して復習することができる
  • Office Hourに参加しやすい。通学時間がないこととも関連するが、普段なかなか忙しくて参加しづらい教授のOffice Hourに参加しやすい。また、質問がなくても参加して他の学生の質問を聞くことができる。教授の個室への訪問に比べてオンラインのOffice Hourへの参加は格段に精神的ハードルが低い

グループワーク

  • 集まりやすい。全員が移動時間等ない生活をしているため、ミーティングの日時のすり合わせが以前と比較して格段に楽。
  • コミットメントが高い。ソーシャル活動が制限されることから勉強へのコミットメントが平均的に上がっているように感じる。グループワークがより活性化しやすいし、各人のタスクの分担が公平に起きやすい。ただし、これは飽く迄現在の筆者の印象であり、検証が必要。

【デメリット】

授業前

  • 隙間時間がほぼ無い。メリットでもあるが、デメリットも感じる。早めに教室に着いた学生同士や教授との雑談や休み時間の立ち話が少し恋しい。些細なことではあるが、それが楽しくもあった(なお、Zoomでも教授によっては早めに入れば雑談はできるが、(誰が話す?)という探り合いが続く微妙な距離感があり、なかなか難しい)

授業中

  • チャット機能や挙手機能により、質問のハードルが格段に下がった。こちらもメリット且つデメリット。チャットで冗談を言う学生、調べればすぐわかる質問をして授業の進捗を遅くしてしまう学生がどうしても出てくる。出席点が絡むため、チャットに質問を放り込むインセンティブが働いてしまう。また、パッと見では質問の重要度を判断するのが難しいため、教授は軽重分からず質問を一つひとつ取り上げてしまう。
  • 集中力が切れやすい。かなり自律出来る人でないと、授業の時間中集中力を維持するのは至難の業。調べ物ができるのはメリットだが、気づいたらネットサーフィンをしてしまっていた、ということが起きてもおかしくない(筆者は辛うじて自律を保っていると思う)
  • Breakout Roomの議論が不自然。教室での授業で「これから5分間隣の人と〇〇について話し合ってみましょう」という時間があり、それをオンラインで代替するのがZoomのBreakout Room機能。ただ、結構な確率で全く知らない人と当たる(一方、教室だとある程度固定席になっているので、知っている人と議論できる)。自己紹介をしてしまったら時間がなくなるし、いきなり議論しても不自然だし、、、と不自然な雰囲気が流れ、議論が活性化しない。一方で、全員の名前が画面に表示されるのは名前を覚えるのが苦手な筆者からすると有難い

以上が筆者が現時点で感じているメリットとデメリットです。実は多くの日本人にとっては、アカデミックに絞ればメリットがデメリットを上回るのではないかなと考えております。

一方で、アカデミックの効率が増してソーシャルが制限される現況下で、余った時間を何に費やしどのような経験やスキルを得るのか(起業、リモートでインターン、今までできなかった分野の勉強、それでもソーシャル等々)。それぞれのMBA生、特に2年生が直面している問題だと思います。私は勉強にフォーカスしようと考えていますが、MBA生の読者の方がいれば、是非お聞きしたいところです。

就職活動(コンサル)・1年生前半の学生生活

Class of 2021の者です。受験生の皆様から就職活動についてお問い合わせを受けることが多いので、自分の経験をブログに綴ります。尚、メインは夏休みのインターンシップに向けた、1年生の就職活動です。そして、業界としては、私が就職活動をしたコンサルティング会社(東京オフィス)が中心です。一方で、Wharton Schoolの1年生の8月~2月に掛けてのスケジュール感がイメージできるように書いていますので、

  • 「1年生のAcademics/Social/Recruitingのバランスを知りたい」
  • 「MBA後のキャリアとしてコンサルティング会社に興味がある」

といった方々の参考になれば幸いです。

また、各月のAcademics/Social/Recruitingの労力の割き方のイメージが分かるように、各月の冒頭に“A:S:R = 5:2:3“といった目安を記しています。

私見を多く含みますが、少しでもご参考になれば幸いです。

1.スケジュール

8月      A:S:R = 3:7:0

入学直後はリーダーシップ・チームワークの授業があるものの、他の時間は多くの同級生と知り合う為の時間に費やされる。リクルーティングについては、MBA Career Management Officeからオリエンテーションがあるものの、学生は「まだ先の話。今を楽しもう!」という感覚でいる。

9月 A:S:R = 4:4:2

授業が本格的に始まり、授業・個人課題・グループワーク等で皆忙しくなる。一方でソーシャルは継続。毎週木曜日に大きなパーティーが開催され、それはそれで忙しい(二日酔いで翌日も機能しない)。一方で、学校が取りまとめるレジュメ・ブック(全学生の履歴書が掲載された本で、MBA採用に興味のある企業に配布される)用のレジュメの提出期限が10月上旬なので、少しずつリクルーティングが意識される。

尚、MBA受験時にレジュメの提出は必須だが、MBA受験用とリクルーティング用では強調するポイントが異なるので、基本的に全員がMBA受験用のレジュメを修正する必要がある。MBA Career Management Officeがレジュメの書き方ワークショップを開催してくれたり、個別面談に応じてくれたり、2年生のフィードバックセッションを設定してくれたりするので、米国式の就職活動向けレジュメの作成のノウハウを持っていなくても、心配は要らない。東京オフィスを希望する場合でも、英語のレジュメの提出が必須である。日本語の履歴書は不要。

10月 A:S:R=3:4:3

月の前半は第1Qの試験期間なので勉強モードが継続するが、10月下旬から本格的なリクルーティング期間が始まり人によっては全く授業に参加しなくなる。特に投資銀行のリクルーティングをする人は頻繁にNYに行く必要があり、授業を欠席しがち。

コンサルティングやテック系の会社の場合、キャンパス内またはキャンパス近辺で説明会/Coffee Chat/Drinksを頻繁に開催してくれるので授業との両立は可能。一方でリクルーティングに力を入れる学生の多くは企業の方々とのネットワーキングに時間を費やし始める。

因みにCoffee ChatやDrinksは当然ながら学生は無料で参加できる。美味しいドーナツやバーガーを沢山無料で食べることができるので案外毎日楽しい。

11月 A:S:R=3:3:4

第2Qに入り、勉強のリズムは多くの人が掴めてきているのと、このタイミングに忙しいことを見越してあまり授業を履修していない人が結構いるのとでAcademicsは盛り上がりに欠ける。一方で、面接のある1月を除けばリクルーティングが最も盛り上がる月と言える。

多くのイベントが11月3週目のThanksgiving前に集中するので、ほぼ毎日何らかのイベントがある状態。それに加えて、コンサルティング会社の面接ではケース面接というのがあるので、その準備も意識される。Thanksgiving 休暇には旅行を企画している学生も多く、旅行ぐらいは楽しみたいということで、それまでにネットワーキングと面接練習の目途を立ててしまおうという人が多い。

ケース面接については、所謂MBB(McKinsey, BCG, Bain)から社費できている同級生に面接官役を依頼したり、Career Management OfficeやConsulting Clubが提供するケース面接練習のスロット(面接官役の多くは夏にコンサルティング会社でインターンをした2年生)を利用したり、同級生同士で練習したりして対策する。

日本人については、11月上旬に開催されるボストンキャリアフォーラムで各コンサルティング会社の東京オフィスの方々と面談(面接ではない)することが多い。

11月中旬に申し込みの締め切りが集中する。提出資料は多くなく、9月に完成させたレジュメがメインだが、完成度に自信がない人はここで再修正をして提出する。多くの人が1月に開催される面接の招待を受ける。

12月 A:S:R=3:3:4

12月上旬は期末試験期間。リクルーティングイベントもひと段落し、しばし勉強に追われる日々。冬休みに旅行を企画する学生が多く、それはそれで楽しむ。一方で冬休み中もリモートでケース面接練習をしたり、旅行している同級生同士で面接練習をしたりすることがあるらしい。1月中旬の面接ではケースの出来もさることながらFIT面接(志望動機や過去の経験等に関する面接)も重要であることから、12月に入ってFIT面接対策を始める人も多い。

1月 A:S:R=2:2:6

第3Qの授業は1月最終週まで始まらない。コンサルティング会社や投資銀行は1月中旬には全ての面接を終えるので、これらの業界を志望している学生は面接に全力投球。最も学生が精神的に不安定になる月と言える。早めに内定を勝ち取って安堵する学生もいれば、望んだ会社からオファーがもらえず軌道修正を求められる学生もいて、リクルーティングの話をするのはなかなか気まずい。

1月末から、各社が内定者懇親会のようなものを開催する。そこで初めて友人が同じ会社に内定をもらったことを知ることもしばしば。

2月 A:S:R=4:6:0

コンサルティング、投資銀行の就職活動をしていた組は早々にリラックスモードに入る。今まで疎かにしていた勉強を頑張る学生もいれば、ソーシャルに走る学生もいる。一方でテックやPE、VCの就職活動をしている学生はまだまだ正念場。Zoom等でチャットしてる姿がキャンパス内で頻繁に見かけられる。また、西海岸に行く学生も多い。

以上、半年間のスケジュールのイメージでした。

2.リソース

上記のスケジュールでも触れていますが、学生が得られるリソースについて纏めます。

Career Management Office

専属のキャリアアドバイザーがいます。コンサルティング会社の場合は2名。レジュメ・面接(ただし、FITに限る)のアドバイスを個別にしてくれますが、忙しいのでリクルーティング期間を通して3回ぐらいしか会えないという感覚です。

MBA Career Fellows

Career Management Officeが指定した2年生。忙しいキャリアアドバイザーを補完する形で、面接練習やレジュメの確認に時間を費やしてくれます。

Consulting Club

2年生がケース面接のワークショップを開催してくれたり、実際に面接練習に付き合ってくれます。コンサルティング会社へのリクルーティングを目指すのであれば参加必須と言えるでしょう。

同級生

MBBの社費生が多くいます。彼ら/彼女らは面接の練習に良く付き合ってくれます。各社の実態を知るのにもいいでしょう。また、面接練習慣れしてきた1年生もいいアドバイスをくれることが多いですが、MBB社費生に練習相手になってもらう場合と違って、自分も面接官役にならないといけないので、練習だけで2時間かかります。勿論、他人の面接官役をやることで多くの気付きを得ることもできます。

各社の専属リクルーター

MBBがWharton専門のリクルーターをキャンパス近くに張り付けにします。Coffee Chatやケース面接対策等、親身になって対応してくれるので非常に有用です。

3.役立ったツール

Rocketblocks: ケース面接のフレームワーク、計算、ブレインストーミングを練習できます。

Caseinterview.com:良インタビュー、悪インタビュー例は秀逸です。

一方で、私個人の意見ですが、あまりに型にはまったケース面接対策本は役に立ちませんでした。寧ろ『イシューからはじめよ』『企業参謀』『論点思考』『仮説思考』といった本の方が、本質に近くて好きでした。

4.所感

ケース面接について不安に思っている方がいると思います。実際にWharton生でも多くの学生は30回程度練習を積んで本番に臨むケースが多いです。ただ、練習は量ではなく質が大事だと考えます。本質を掴む力を鍛え、弱みを潰す機会を充分に確保していれば(それはRocketblocksでもできます)、回数が少なくても充分に内定を勝ち取ることは可能です。

また、どのMBBからの社費生に聞いても「FIT面接はケース面接と同じかそれ以上に重要」と声をそろえて言います。そもそもなぜコンサルティング会社なのか、腹落ちするまで考えることをお勧めします。

一方で、ネットワーキングは必要最低限で構わないです。特に東京オフィスを目指す場合、キャンパスにいるリクルーターと非常に仲良くなったところで得られる効果は限定的だと思うので、各セッションは各社の文化を知る機会(あるいは美味しいドーナツを食べる機会)と割り切って参加すればいいと思います。

以上、冒頭にも申し上げた通り、飽く迄私見を多く含みます。内定獲得までの道は一人ひとり違いますが、ひとつの事例としてご参考になれば幸いです。

もしご不明点があれば、いつでもお問い合わせフォームで質問ください。

BLM運動と黒人差別について(在校生インタビュー #4)

ジョージフロイドが警官の暴行により死亡した事件を受け、アメリカでBlack Lives Matter(以下BLM)運動が盛んになっています。実際ウォートンのあるフィラデルフィアでも暴動が起き、外出禁止令が出される事態となりました。黒人が国民の13%を占める国における人種(黒人)差別。この問題についての日本語での資料、特に当事者目線でのものが少ないという問題意識から、クラスメートへのインタビューを通じて生の声を日本語で届けようと今回の記事を企画しました。在校生を紹介する記事の第4回目でもあります。

  • 今日はインタビューを受けてくれてありがとう。まずは簡単に自己紹介してもらえるかな?

僕の名前はCam Maple。アメリカのいろいろな場所で過ごしてきたんだけど、元々はパセデナ(Pasadena)というロサンゼルスの都市で育って、その後いろいろな都市を転々として、小学校5年生の時にフィラデルフィアの郊外に引っ越してきた。

学部ではプリンストン大学で公共政策を専攻し、人種と差別、原発の将来、ヘルスケア、その他の公共政策について勉強していた。プリンストンでは多くの学業以外の活動もしていて、大学内外での人種差別問題に対して学内で抗議活動をするというのもその一つだった。

大学卒業後はFacebookに就職し、ブラントパートナーシップの部署で働いた。4年間Facebookで働いた後キャリアチェンジのためにWhartonにきた。ビジネススクールに行くことが常に僕の目標の一つだったからね。

  • ありがとう。早速だけど、なんで最近BLM運動がアメリカでこれほどまでに広がっているんだろう?

この問題は深い問題で、一人の人が答えられるようなものではないが、僕はこれまで黒人差別について勉強してきたので、それを基に答えたいと思う。

そもそも、アメリカにおいて「人種」とは何百年もの黒人差別の歴史にほかならない。

一つ覚えておくべきなのは、アメリカにおいて「人種」という言葉が差別のために社会的に作られたものであるということだ。これまでアメリカにおいて「人種の違い」という概念は、生物的な違いに基づいた考えではなく、差別や奴隷制度を正当化されるための手段であったと言える。奴隷制度はアメリカが資本主義社会において成長する上で大きな役割を果たしてきた。1619年に初めての奴隷がアメリカに連れてこられたとされているが、1500年代にはアメリカに奴隷として連れてこられたアフリカ人がいたとも言われている。1860年代に制度上は奴隷制度が廃止されたが、それ以後も様々な方法で事実上奴隷制度が続き、人種差別が行われてきた。

最近のBLM運動を理解するためにはこれらの歴史について理解することが欠かせない。BLM運動は実は2013年に始まった比較的新しい運動だ。近代の市民権運動とも呼ばれるこれらの活動は新たな黒人の自由解放運動といえる。BLM運動の歴史自体は浅いが、実際はアメリカ建国から続く長い黒人をめぐる対話の一部に過ぎない。

もう一つ見逃してはならないことは警察組織による黒人への残虐行為だ。知らない人もいるかもしれないが、アメリカの警察組織はコミュニティの夜警団や奴隷の逃走を防ぐための組織を起源としている。これらの組織が税金で運営されるようになり、今我々が目にする警察となっている。その組織が黒人の投票権を奪ったり、場合によっては黒人を殺害することもあった。

  • なるほど。今年起きているBLM運動というのは今まで歴史的に起こってきた運動と何か違いはあるのだろうか。

このような運動は黒人だけではなくて黒人以外のアライ*も含めて永遠とも思えるような長い間行われてきた。ただ今回の運動はこれまで以上に広範囲にわたるもので、多くの人が警察の残虐行為に対して反対していることが特徴だ。ただし、このように幅広いサポートがあり、警察の残忍性に対しての声が上がってはいるものの、アメリカの人種差別の概要についての理解はまだ足りないと思っている。警察だけではなく本質的には全ての組織が精査され見直される必要があるんだ。これまでアメリカで作られてきた組織は黒人が白人に劣るという考え方を持った人によって作られたものだし、そのような考え方が黒人投票権の剥奪や差別主義につながってきた。

* アライ(Ally) – 差別解消に当たって共に協力する人たち。日本では「LGBTアライ」という意味でも使われる。

現在のBLM運動が国家的に活発になったきっかけについても触れておきたい。知ってると思うけど最近の運動はジョージ・フロイドが警察官によって7分46秒もの間首を膝で押さえつけられた後に死亡したことに端を発した。

黒人たちはこれまでも警察の暴力や警察が周りにいることで感じる不安、しばしば黒人が警察官によって殺されることについて抗議してきた。実際アメリカでは黒人というだけで他の人種であれば呼び止められもしないであろうことで職務質問を受けるし、ときにはジョージ・フロイドのようなことも起こる。同レベルの犯罪で警官に呼び止められた際、黒人男性の方が白人男性よりも警官に殺される確率が3.2-3.5倍高いとした研究もある。

ジョージ・フロイドの件でいえば、彼は偽装紙幣の使用を疑った店主によって警官が呼ばれて暴行を受けたが、公表されているビデオからは彼が常時警官に協力的だったように見える。僕の個人的な考えでは、他の無実の黒人が殺されてきた事象はこれまでにも多々あったし、黒人はみんなそのことを認識しているが、今回の事件はそれがビデオによって公になったことで問題が明らかになり、特に白人にとってショックな出来事だった。そしてそれが引き金となって今回の動きを生み出しているのだと思う。ただし全国民がこの運動に賛同しているわけではないことも事実で、実際SNSでも首を膝で押さえつける振りをして揶揄をし、警官の行動を正当だと主張する動画が挙げられたりしている。これは難しい問題だし、まだ全員の賛同を受けられているわけではないということは考えるべき重要なことだ。

また団結をする際は行動が伴わなければいけないということも伝えたい。現在前例のない団結が生まれているが、ただ団結することに満足せずに実際に変化を生み出すために動いてもらいたい。

  • 行動として最近は銅像の撤去や学校名の変更などが行われている。これについてはどう思う?

まず国民的感情から考えてみよう。人種差別は間違いで、警官による暴力もやりすぎだ、という方向性で世論は動いている。それを受けてこれまで差別によったシステムを採用していた組織や機関が名前の変更などに動いていることは確かだが、まだそれ以上の動きにつながっているとは言い難い。

僕個人の考えとしては、もしこの動きが加速していかないのであればこれまでの動きも各組織の広報活動の一部に過ぎないと思う。これまでの動きは問題の根本的な解決には程遠いし焼け石に水だ。本当に意味のある改革を行わず、自己の罪悪感を和らげるための声明をしたに過ぎないかもしれない。このような銅像の撤去などの決定は改革のための第一歩であるのかもしれないが、これ自体に黒人の経験が実際に変わるような意義があるとは思っていない。むしろこれらが世論の批判を避けるための広報活動の一環として行われているのではないかと危惧している。

  • これまではニュースで出ているような事項について聞いてきたけど、もう少し個人的な質問をしてもいいかな。

もちろん

  • Camは大学でも黒人差別に関する運動をしていたと聞いたけどこれについてもう少し詳しく教えてもらえるかな?

まずこれはとても複雑な問題だということに触れておきたい。数多くの米国組織が現時点で存在する黒人差別を守るためにできている。この問題に取り組む上で僕にとって最初のステップは自分を教育することだった。ハリウッド映画や音楽は影響力を持つが必ずしも現実を反映しているとは限らない。だから自分を教育するために黒人にまつわる事実について調べるということが第一歩だった。そしてそれ以降は自分が関わってきた組織、環境において人種差別を減らす行動を起こしてきた。大学では活動家として校内の様々なデモを主導してきたし黒人学生の生活改善のために設立されたいくつかの組織にも参画していた。学校の理事に対して黒人にとってより包摂的な環境になるように働きかけたり、下級生の黒人学生のメンターになったりしてきた。

Facebookに就職してまず最初に行ったのは「Level up」(今はElevateと呼ばれている)というプログラムの設立だった。Facebookで働く中でマイノリティーのビジネスオーナーを助けることに大きな機会を感じていた。そこで他の優秀な同僚たちとともに、彼らビジネスオーナーに広告についてのトレーニングをすることにしたんだ。会社から資金をもらい、彼らにFacebookやインスタグラムを利用して事業を拡大させるトレーニングを行った。僕にとって資本というものの大切さについて思い知らされる出来事だったし、マイノリティ、特に黒人の事業をサポートすることは彼らが自由になるための第一歩だと強く信じている。業務外の時間もこの活動に多くの時間を捧げてきたし、現在このプログラムは数千のスモールビジネスをサポートしてブランド構築に一役買っている。

Whartonに入ってからもこの問題をどのように広め、変えてくるかについて常に考えてきた。たくさんのクラスメートと個人的に話をしてきたし、このインタビューのような機会が増えていくことを望んでいる。また、将来的に世界を引っ張るであろうクラスメートがこの問題を真剣に捉えることが、社会を変えるために役立つと信じてる。

  • プリンストンとWhartonで違いはあるだろうか?

プリンストンでは「Race is Socially Constructed: Now What? (Prof. Ruha Benjamin) 」という授業を受けた。彼女はTED talkをしたり、を出版したりしているのでも是非観て(読んで)欲しい。この授業のなかで彼女は人種差別のある組織をリンゴ果樹園に例えたんだ。ちなみに日本のリンゴ園がどのくらいの大きさかわからないけどアメリカの果樹園はとても大きいんだ(笑)。アイデアは、果樹園はリンゴがなくても存在しうるというものだ。同様に人種差別が組織そのもに根付いていて、それは人種差別主義者の存在にかかわらず成立していることがある。差別主義者を減らすことのみならず、システムそのものを変えることにも注力するべきだという主張だ。

プリンストン大学もペンシルベニア大学も歴史ある大学だし、黒人が白人と同等と見なされていなかった時代に設立されている。だから平等性の欠如と言うものが刻み込まれていると思うし、システムとしてその根本を変える必要があると思う。もちろん細かい差はあるし、平均年齢の違いもあるから今のクラスメートの方がより大人だけどね。

  • 差別問題はアメリカの抱える一つの大きな問題だと思う。Whartonの必修授業ではこの問題が扱われてこなかったけど、アメリカ国外からきた学生も多くいる訳だし、アメリカの歴史を取り上げて議論するクラスが一つはあってもいいと思うな。

本当にその通りだと思う。まさに学校に是非変えて欲しい部分の一つだ。必修授業は学校として何をビジネスリーダーが持つべき素養と考えているのかを表していると思う。金融、マーケティング、法律などは教えるべき大切な要素だとは思うけど、ダイバーシティを重んじ、海外からの学生も多く受け入れる学校としては人種差別について学ぶことも大切だと思うよ。もしそのような機会があれば、いつか人種差別問題を学んだWharton生が世界各地で社会を引っ張る存在となり、社会を変えられるかもしれないよね。

  • 個人的な話についても聞いていいかな?アメリカで生まれ育つ中でどのように差別というものがCamや周りの人に影響を及ぼしたのか。

まず注意しておきたいのは、個人的な話というものはトラウマ体験として残っていることが多いから、こういう質問をする際には細心の注意を払って欲しい。

また、この問題の影響はその人の環境によって異なる。例えば移民一世かどうかや、アフリカ系か、カリブ海系か。僕の家族の場合は数世代にわたってアメリカに住んできた。

母親父親双方の家系での例を話そうと思う。僕の母親はテネシー州のオークリッジという小さい街で育った。この街はマンハッタン計画の前哨基地でもあった。1960年代に有数の科学者が次々とやってきて原爆開発に勤しんだ。当時は放射性廃棄物の処理のプロトコルなど存在していなかった。だから、これは実際に文書として残っている事実なんだけど、放射性廃棄物を生活用水の供給源に捨てたんだ。その生活用水は黒人によって広く利用されるものだった。母親によれば、汚染された水のせいで生まれた3つ頭のおたまじゃくしを見たりしたらしい。そしてその周辺に住む黒人は今でも後遺症に苦しんでいる。神経系の病気や高い癌罹患率などだ。このような国家計画による多大な影響について考えてみて欲しい。

父方の家系の話もある。僕の義理の曽祖父はテネシー州の小さな街でレストランが併設された雑貨店を経営していた。1970年の12月、遠くない昔だよね、に彼は頭を撃ち抜かれて死んでいるのが見つかった。彼の店は焼失していた。警察は人種差別とは関係ないとして処理したが、彼は黒人選挙権の活動家でもあった。1940年代から1960年代にかけて黒人の選挙権獲得に向けて活動していた。だから我々やそのことを知る人は白人ナショナリストグループによって殺害されたのではないかと信じている。

これらが2つの大きな問題だけど、これ以外にも例えば僕の父親は警察から嫌がらせを受けてきたし、僕自身も黒人だということで例えば店の中でいわれのない差別を受けたりしてきた。そのような経験がどんどん積み重って、僕自身も差別を受け入れながら生きていくことを学んだんだ。黒人だということで知能に疑問を持たれたり、目の前で差別的な言葉を投げかけられたり、差別的なことをいう教授や同僚もいた。アメリカで過ごす黒人の全てが何らかの形で差別を経験している。

これまでの経験から他人にどのように見られているかについて常に考えながら生きなければいけないということを学んできた。僕が黒人であったことで初めて差別を受けたのは6歳の時だった。僕は店でCDを手に取って母親のところに歩いて行ったんだ。それを見た母親は「何を持ってるの、そんなCD買わないわよ。元の場所に返しなさい」と言って僕にCDを戻させた。よくある親子の会話だよね。その後祖父母の家に帰ると母親が僕を風呂場に連れて行き、突然泣き出したんだ。母によれば、その店にいた白人女性が、僕がCDを盗もうとしていると責め立てたというんだ。小学生にもなっていない子供なのに。肌の色が違うというそれだけの理由で、僕らは脅威とみなされ、犯罪を犯すと思われるんだ。僕の母親はその事実を6歳の僕に教えようとしていた。6歳の子供にそんな話をすること自体悲しいことだが、アメリカで暮らす黒人は幼少期から皆似たような経験をしている。それ以降僕は店の中ではポケットに手を入れないように気をつけ、何かを盗んでいるように疑われないようにし、フードなどはかぶらないようにしている。これらは周りからの差別的な言動を受けて自然に身についた習慣だ。

  • この記事を読んでいるMBAを目指して将来社会のリーダーになるであろう人たちへ何かメッセージはある?

この問題について議論をし、学ぶことが大事だ。僕自身アメリカで暮らし、学術記事から学んでいるが、この問題は根深いし、日々刻々と変化するものでもある。差別記事などをもとに自分に問いかけ、深掘りしてみて欲しい。また、我々も日々差別の解消に向けて活動をしているが、それにも限界はある。より大きな力で動かしていくためにはアライの協力は必要不可欠だ。今回のような日本人による日本語でのインタビュー記事執筆は、我々だけでは伝えることのできない読者へメッセージを伝えることができるということで大きな意味があると思うよ。

これらの運動を実際の変化につなげていくことも大切だ。黒人たちは今までも変化を求めて運動してきたが、人々は、「それほど大きな問題ではない」「我々は改善している」「作り話だ」などと言って真剣に取り合ってこなかった、その結果みんな疲弊している。黒人でないアライの人々も声を上げることが実際の変化をもたらす上で重要な助けになると思う。

またこの問題は黒人だけでなく全員にとって公正な社会を作るという流れの一つだ。この社会は集合知や構成員の共同作業によって成り立っているわけだから、社会の全員が公平に扱われるようなものにしなければならない。

  • BLM運動について学ぶ上でどこから始めたらいいだろう?

まずは歴史的背景を学ぶのがいいと思う。どのようにアメリカが建国されて人種というものがアメリカ社会に影響を及ぼしてきたか。決定版のような本はないけれども。僕も今回の問題を受けてまとめている資料(READ, LISTEN & WATCH to SEEK DEEPER UNDERSTANDINGと書かれている部分)もある。まだ始めたばかりだけどね。Stamped from the Beginningという本もアメリカの人種の歴史について網羅しているからおすすめだ。その他にもあらゆる書籍や記事はあるから自分に合うものを見つけて読むといいと思うよ。

  • 最後に読者に向けて何か伝えたいことはある?

アメリカでの議論の中心は、黒人男性が警官に殺されたということに向けられている。Kimberlé Crenshaw教授が「インターセクショナリティ」という言葉で示したように、黒人の自由化について話す時は全ての黒人に目を向けることが重要だ。みんなにこのことについて考えて欲しい。例えばBreonna Taylorという女性がいて。彼女は睡眠中に警官に殺されている。ジョージ・フロイドの事件に比べて彼女についての議論はとても少ない。議論の多さの競争をするわけではないが、黒人女性も殺されているということ、黒人は性別によらず皆差別を受けているということを認識し、全ての人に平等に目を向けることが必要だと思う。

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いかがだったでしょうか。BLM運動というものが一過性の運動ではないこと、そしてアメリカという国で人種差別が長く根強く残っていることを受け止めていただけたのではないかと思います。BLM運動が盛んになったことをきっかけに私も黒人差別について勉強しはじめました。黒人差別についてまとめたHBSケース(英語)は歴史と共に様々な角度からの問題点がまとめられて理解に役立ちましたので、どこから始めたらいいか迷った方にははじめに読むものとしてお勧めします。

今回のインタビュー相手は私と同じコホート(必修授業を一緒に受ける約70名のクラス)のクラスメートです。これまでは少し会話をする程度でしたが、今回の企画を伝えたところ快く引き受けてくれ、インタビューから内容のレビューまで多くの時間を使ってもらいました。私自身は入学から1年が経過し残り1年のMBA生活となりますが、残りの1年はこのようにクラスメートと深く関わる機会を増やして行きたいと思っています。

Whartonに限らず、MBAを取られた方々と話すと、MBAでの一番の経験はクラスメートとの交流であるといわれる方が非常に多いことに気がつきます。その源泉は国籍や人種、仕事内外での経験などの多様性であると信じていますし、興味があれば是非海外のMBAを検討していただければ、そして願わくばWhartonも候補の一つに入れてもらえればと思っています。